版本の挿絵と浮世絵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/28 10:24 UTC 版)
『源氏物語』の人気は江戸時代に入っても衰えることはなく、その享受は従来からの教養層である公家や武家以外にも広がった。承応3年(1654年)、蒔絵師で俳人でもあった山本春正は挿絵入りの版本『絵入源氏物語』を刊行する。全六十巻、挿絵の数は226図にも及ぶもので、以降正徳年間に至るまで上方と江戸において再版された。この『絵入源氏物語』の挿絵は、こののちに出版された『源氏物語』の注釈書や梗概書の挿絵にもその図様が流用され、そのなかには当時の浮世絵師菱川師宣によるものがある。ほかにも江戸で刊行されたものには師宣風の挿絵が入れられている。これら版本の挿絵は、それまでの土佐派の製作した色紙絵などの図様に倣ったものもあるが、なかにはそれまでの源氏絵には無かった場面の選択や構図も見られる。 こうした伝統的な図様の源氏絵は浮世絵の題材にもなり、師宣よりのち、石川政信や西村重長、また初代歌川豊国や歌川広重などが揃い物の源氏絵を手がけている。しかしそれらとは別に古来からの図様そのままではなく、『源氏物語』の登場人物などを「当世風」、すなわち当時の江戸時代の風俗で描くといったものもあり、鈴木春信などが「当世風」の源氏絵を描いている。
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