為替レートターゲット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:35 UTC 版)
「スイス国立銀行」の記事における「為替レートターゲット」の解説
2011年9月、スイス・フランの対ユーロ相場に1ユーロ=1.2フランの上限目標を設定し、2013年11月現在も継続している。 2015年1月15日、上限を撤廃した。スイス・フラン相場は一時、対ユーロで約30%急騰した。この撤廃はIMFにすら事前連絡がなかった。これまでのフラン売り・ユーロ買いの市場介入で、外貨準備は国内総生産の7割まで膨張していた。 その為替ターゲットが放棄され一時は1ユーロ0.8スイスフランにまで増価し、その後1ユーロ約1.0スイスフランに落ち着いた。このスイスフラン高のためにスイス国内の製造業や観光業が打撃を被っている。スイス国内の時計メーカーはドイツなど周辺国向けに高級時計を輸出し、観光業は海外から多くの観光客を呼び込む。だがスイスフラン高でアルペンスキーのリゾートへの客足が減少。時計産業も苦戦し、スウォッチの株価は15%下落、リシュモンの株価は14%下落となった。リシュモンの2015年度第4四半期の売上は前期比約4%増であり、約30億ユーロに達していたにもかかわらずである。UBSによるスイスの2015年度の経済成長率予測は1.8%から0.5%に下方修正された。スイス国立銀行は1ユーロ1.2スイスフランを維持すると宣言していたが、一転してその為替ターゲットを放棄した。LVMHは、スイスの銀行家の業務の信用を貶めたとしてスイス国立銀行を非難した。トーマス・ジョルダンは、その為替ターゲットによってスイスを深刻な害から保護したがその為替ターゲットはもはや正当化されないと述べた。 だが一転してその2週間後にスイス国立銀行が1ユーロ1.05から1.10スイスフランのレートを維持するよう非公式な為替ターゲットを導入するのではないかとする憶測が投資家の間で高まった。スイス国立銀行は公式声明こそ出してはいないが着実に為替市場に介入し、2015年2月上旬において1ユーロ1.05スイスフランのレート水準にまで達している。 スイス国立銀行は沈黙を破り為替市場に再介入する意向をしめした。SNBは既にマイナス0.75%の金利を導入しておりこれによってスイスフラン安誘導への大きなインパクトになったと強調しつつ、必要があればさらなる金利下げも選択肢だとジョルダンは示唆した。この再介入に先立ち、スイス政府はスイスフラン高が景気減速をもたらすと警告していた。ジョルダンはスイスフランの増価がスイス経済にどの程度影響を与えるかについて予測するのは時期尚早だとしながらも、その増価によってスイスのインフレ率と経済成長率もSNBの予測値を下回るのではないかと述べた。 2015年のギリシャ情勢など、ユーロ安スイスフラン高の圧力が高まることはスイスの輸出産業へのダメージとなる。スイス連邦貿易連合(SGB)は、スイスフランの増価はスイスの雇用と賃金に圧力をかけ、実際に既に何千という雇用が失われていると述べた。そしてSGBは、スイスフランを減価するのにマイナス金利政策だけでは不十分だとしてスイス国立銀行を批判し、再度ユーロに対して公式な為替ターゲットを設定するようスイス国立銀行に要請した。
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