淹れた紅茶の化学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 03:30 UTC 版)
紅茶の茶湯の水色は、抽出に用いた水の硬度により大きく変化する。硬水(ミネラル成分が多く、いわゆる硬度が高い水)はミネラルがタンニンなどと結合して沈殿を生じ、茶湯の水色は呈色成分と併せて濃く暗い色調となる。炭酸カルシウム沈殿物とフェノール凝集体が浮いてくる場合もある。蜂蜜を入れた場合も蜂蜜中の鉄分がタンニン鉄を生じてやはり色が濃くなる。 逆に、紅茶にレモンを入れると茶湯の水色は薄くなる。これはレモンに含まれるクエン酸が、呈色成分のテアフラビンに働き、残ったテアルビジンの色のみになるためである。この変化は酸性によって働くため、レモン以外の柑橘類、酢酸などでも同様になる。このテアフラビンはアルカリ性で逆に色が濃くなるが、これはさきほどのミネラル成分との結合とは反応が異なる。 茶葉に含まれるタンニンは、革なめしにも使用されている程、タンパク質と結合して変性しやすい成分である。紅茶では、口の中の粘膜に含まれるタンパク質と反応し、これが「渋み」の原因になる。タンニンは軟水に抽出されやすく、硬水では反応により口に入るタンニンが減るため軟水よりも渋くならない。このため、飲料水の硬度が比較的高い欧州では、緑茶よりも紅茶が好まれている。ただし、茶湯に茶葉を浸している時間が長ければ、茶葉からタンニンが大量に抽出されるため硬水といえども味は渋くなる。茶葉からタンニンが出てくるまでには時間がかかるため、なるべく熱水で紅茶の茶葉を蒸らす時間を加減して、茶葉を早めに引き上げることで、タンニンの抽出が抑えられる。タンニンはミネラルとも反応して沈殿を生じるため、特にタンニンのある紅茶を含む茶類の飲み過ぎは貧血の原因になると指摘されることがある。既に赤血球中にヘム鉄として取り込まれた鉄には影響せず、疾病を伴うものでない限りバランスよく摂れば影響はない。しかし、タンニンなどのポリフェノール類は、体内での働きや他の物質との相関作用はまだ研究途上であり、程度を超えた過剰摂取は体によくない。 風味には好みがあるが、理想的にはほどほどの無機物を含んだ中性に近い水がよいとされる。完成した紅茶はPh5前後のやや酸性の液体となり、風味のバランスが良くなる。蒸留水で紅茶を淹れると深みのない平坦な味になる。
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