液体培地と固体培地
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/09/05 09:10 UTC 版)
水に栄養分が溶けた状態で培地として用いるものを液体培地、固形のものを用いるものを固体培地という。歴史的には肉汁など液体培地が先行した。しかし、液体培地の場合、目的外の微生物が混入しやすく、またそれらを取り分けることがとても困難である。これに対する回答が固体培地である。固体上であれば、多くの微生物は最初の細胞の周囲にコロニーを形成するため、それらを取り分けたり選別したりすることが容易となる。ただし下記のように液体培地には固体培地にはない利点もあり、現在も目的にあわせて両方が用いられている。 液体培地: 液状の培地。調製が容易で比較的安価。 培地と生物との懸濁が容易で、高密度培養が可能。 通気、攪拌、振盪などの撹乱を与えることが可能。 回分培養、半回分培養、連続培養など柔軟な培養系の構築が可能。 コンタミネーションに弱い。一度混入したものは分離不可。混入したこと自体も分かりにくい。 固体培地と比較して培養一世代の寿命は短い。 足場依存性のある細胞や固着性の細胞を増やす場合、担体を沈めたりビーズを混ぜたりして表面積を稼ぐ必要がある。 固体培地: 液体培地を寒天などで固めたもの。足場依存性のある細胞を直接培養できる。 生物が培地のリソースを食い潰しにくく、液体培地よりも長持ちする。 コンタミネーションが判別しやすい。コロニーの状況によっては、混入したものを分離することもできる。 生物が直接アクセスできる培地量が限られるため、急速な培養には向かない。 一般に、液体培地よりもコストが高い。 固体培地はロベルト・コッホが最初に考案した。彼は、蒸したジャガイモの切り口に点在する雑菌のコロニーを見てこれを思いついたと言われている。当初はゼラチンが良く使われていたが、後に寒天が主流となった(寒天培地)。また、もともと固体であるもの、例えばきのこ栽培のためのおが屑なども固体培地と考えることができる。 生物によっては、両者を組み合わせた二相培地が用いられることもある。また、同じ生物であっても用途によって培地の使い分けが必要となる場合がある。菌類の場合、陸生菌は溶液中でも菌糸成長するが、胞子は空気中でなければ形成されない場合が多く、固体培地が必要になる。逆に水生菌は寒天培地で培養できても、そのままでは胞子形成が見られないことが多く、そこで作られたコロニーを切り出して水中に投下すると胞子形成が見られる。
※この「液体培地と固体培地」の解説は、「培地」の解説の一部です。
「液体培地と固体培地」を含む「培地」の記事については、「培地」の概要を参照ください。
- 液体培地と固体培地のページへのリンク