武・江田の騎乗について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/04 01:26 UTC 版)
「第104回天皇賞」の記事における「武・江田の騎乗について」の解説
武の騎乗に対しては競走直後より騎手の間から不満の声が上がり、検量室内ではカミノクレッセ騎乗の南井克巳や、リストレーション騎乗の的場均ほか数々の騎手が、自らが受けた不利を大声で話し合う様子が見られた。メイショウビトリア騎乗の岡部幸雄は怒りを露わにし、2位入線のプレクラスニーに騎乗した江田照男に「お前が2着だったんか?」と尋ね、「はい、そうです」と答えた江田に、「ひでえ乗り方するよな。あれじゃ競馬にならねえよな。」と愚痴り、返す刀で記者に対し「ユタカは失格だな。危ねえったらありゃしねえ。後ろの馬は競馬になんねえよ」と吐き捨てた。寡黙な岡部がここまで怒りを露わにするのは珍しく、記者達の間にも緊張が走った。また、被害を受けた騎手たちが「あれだけの反則を処分しないなら、みんなで異議申し立てに行くぞ」と息巻く場面もあった。 パトロールビデオを見た作家の岩川隆は、「これは降着も仕方がないよ、武豊君、なぜ"焦った"のだ、ひどい、というのが実感だった。私も長いあいだ競馬場に通っているが、これだけの大レースで、これだけ多頭数の馬たちが、"斜行"のあおりをくらって一頭は落馬寸前になるような光景を見たことがない。残念ながら武豊騎手のミスだろう」と述べている。競馬評論家の山野浩一は、メジロマックイーンが内へ切れ込んだ後に、好位を取った武はハイペースと見てスピードを落とし、他馬の騎手は引き続きポジションを取ろうと加速していた点に着目し、「インに入り、スピードを押さえ、そこがカーブであったという3つの条件が重なって起きたインターフェアであった」と分析している。さらに山野は「武騎手にはある程度不運な降着だったとは思うが、だからといって全く予測できないインターフェアでもなかっただろう。武騎手に限らず多くの騎手に一つの教訓を残し、競馬学校で教えることが一つ増えたインターフェアでもあった」とも評した。いっぽう、メジロマックイーンのファンである大学教授の植島啓司は、「何度ビデオを見直しても、武豊の選んだコースだけを見ると、ごく普通のものである。あれより外に走ったら、ほとんど逸走に近い。インがごちゃついたのが不運だった。そうとしか言いようがない。インに入るのが1秒早かったというのは結果論だ」と武を擁護している。 一方、大きな混乱には江田の騎乗にも一因があると説く者もいた。競馬評論家の大川慶次郎は次のように述べている。 天皇賞・秋の降着は、はっきりいってあのときの採決委員(ママ)がきまじめすぎたと考えています。あれは騎手に対して5万円の罰金というペナルティーですます問題だったと私は考えています。(中略)メジロマックイーン自体は他の馬になにもしていないんです。むしろマックイーンに先手をとられたプレクラスニーが、あわててそうはさせじとマックイーンにつられて内へよせてしまったのが直接の原因でしょう。マックイーンとプレクラスニーが一緒になって内に幅よせし、この2頭に幅よせされたために内にいたほかの馬同士が激しくぶつかりあってしまったんです。(中略)あれだけの人気馬を降着にしたJRAの度胸は買います。しかし、正直言って、降着にする場合の一番の正解は1・2着の降着ですね。プレクラスニーとの共犯だったのですから。3着が1着になるというのがまずいなら、あくまで1・2着ともにセーフです。武騎手は騎乗停止、江田騎手は罰金ということでもいい。 また、日刊スポーツ記者の松田隆は、「仮にそこで江田騎手が引いていたら、恐らくプレジデントシチーが弾き飛ばされることもなく、武豊騎手は過怠金1万円程度で済んでいたかもしれない」と述べている。さらに、武と親しいライターの島田明宏は、武が進路妨害に至った「誤算」のひとつとして、「自分の内から強引に上がっていったプレクラスニーの騎乗者が血気盛んな若者であることを、さして気に留めていなかったこと」という点を挙げている。 江田は競走前、管理調教師の矢野照正から道中先頭でレースを進めるよう指示を受けており、第2コーナーでの騎乗について次のように説明している。 「あのときは外から豊さんが寄ってきたから、僕も声を出しましたよ。『オーッ』てね。プレクラスニーは無理に抑えると逆にカーッとしてしまう馬なんです。調教師から行くように言われていたこともあったし、馬の気性を考えると抑えるわけにはいかない。おまけに馬体を(他馬に)くっつけても引っ掛かってしまう馬なんです。だからやむなくマックイーンに押されるまま、少し馬体を離したんです。すると今度は内から2、3人『オーッ』て声がかかって、そうなると内をかばって(コーナーを)回らないといけないから仕方なく外(のマックイーン)に併せていったんです」 松田隆はこうした事情を踏まえ、「デビュー2年目の江田騎手にとって、調教師の言葉に背き、しかも斜行して進路をふさいできた大本命のマックイーンに進路を譲るようでは、勝負師として失格のらく印をおされる」と江田を擁護している。
※この「武・江田の騎乗について」の解説は、「第104回天皇賞」の解説の一部です。
「武・江田の騎乗について」を含む「第104回天皇賞」の記事については、「第104回天皇賞」の概要を参照ください。
- 武江田の騎乗についてのページへのリンク