機械インピーダンス
線形の機械系で作用している力の入力点と同じ点、または異なる点の力と同じ方向の速度の比のことで、機械系の振動応答特性を示す。この量は周波数によって変化し、極小値を示す周波数から系の共振周波数を把握することができ、その共振に関係する質量、動ばね定数、減衰を把握することができる。入力および速度は複素量である。ねじり振動系については、上述の力および速度のそれぞれにトルクと角速度が対応する。力が作用している点と同じ点の機械インピーダンスを駆動点インピーダンスと呼び、異なる点に対するものを伝達インピーダンスと呼ぶ。機械インピーダンスの実数部は機械抵抗であり、虚数部は機械リアクタンスである。
反対語 モビリティ参照 インピーダンス、共振周波数、駆動点インピーダンス、動的ばね定数
機械インピーダンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 14:05 UTC 版)
「インピーダンス整合」の記事における「機械インピーダンス」の解説
上記音響インピーダンスでは電圧は音圧(面積あたりの力)、電流は粒子の体積速度とに対応関係があった。この関係を更に見ていこう。インピーダンスは複素平面上で扱うのが普通であるが、ここではスカラーで扱える範囲だけを見ることにする。 L(コイル)C(コンデンサ)R(抵抗)の直列回路に電圧eの電源を繋いだところ電流iが流れたとする。これらの素子には全て同じ大きさの電流が流れ、電圧は加算される(*)ので、eとiには e = L d i d t + 1 C ∫ i d t + R i {\displaystyle e=L{\frac {di}{dt}}+{\frac {1}{C}}\int i\,dt+Ri} の関係がある。ただしL、C、Rはそれぞれコイル、コンデンサ、抵抗のインダクタンス、キャパシタンス、抵抗の大きさである。 一方、質量Mの物体を並列するばねと機械的抵抗(摩擦物や粘性物など、変位の速さに比例した力のかかるもの)で支えたとする。力Fによって、Mが速さvでxだけ変位したとすると、ばねと機械的抵抗も等しく速さvでxだけ変位し、質量Mに合計した力を与える(*)。よって、その時のFとvとの間には F = M d v d t + 1 C m ∫ v d t + R m v {\displaystyle F=M{\frac {dv}{dt}}+{\frac {1}{C_{m}}}\int v\,dt+R_{m}v} の関係がある。ただしCmはコンプライアンス(ばね定数の逆数)、Rmは機械抵抗の大きさである。 これらの2つの式を見比べると、F - e、v - i、M - L、Cm - C、Rm - Rという対応関係がある。 つまり、機械←→電気の間で 並列的な支持←→直列接続 力←→電圧 速さ←→電流 質量←→インダクタンス コンプライアンス←→キャパシタンス 機械抵抗←→抵抗 のように対応付けると、電気回路の振るまいと機械的な振るまいとを同じ式で表す事ができる。電気的なインピーダンスは電圧/電流であるから、機械インピーダンスは力/平均粒子速度(SI単位は N·s/m)、音響インピーダンスは音圧/媒体粒子の体積速度とすると都合がよい。なお機械的な仕事率は電圧と電流の積(= 電力)に問題なく対応する。 (*)ここでは似而非直流源を用意しているが、実際にはeもFも時間的に変動するもの(交流)を考え、その際は電流と電圧、速度と力の位相を考慮しなければならない。そのために複素数を用いた記述を行う。しかし、重い物は力をかけてもすぐ動き出さない/止まらない(力に対して速度の位相が遅れる)、という性質と電圧をかけてもコイルにはなかなか電流が流れない(電圧に対して電流の位相が遅れる)という性質が共通するものだとは納得できるだろう。ばねとコンデンサの対応関係も同様である。なお、電圧に対して電流の位相が遅れるとは「なかなか電流が流れない」という表現をしたが、誤解されやすい事柄であるが、即に電流は反応するのであるが、その変化の様子が電圧とは異なるという意味である。力と物体の速度についても同様の意味(直ぐに反応はするが変化の様子は力のそれと異なる)である。 複素表現はインピーダンスの項参照。上記の置き換えを行うと機械インピーダンスの式になる。
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