標題的意図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/18 14:25 UTC 版)
近年の作品には交響曲の形式よりも標題的な意図に多くの注意を払ったものがある。ハンス・ヴェルナー・ヘンツェはアンナ・ゼーガース著の小説『第七の十字架(英語版)』を構造の骨組みとして、1997年に7楽章からなる交響曲第9番を作曲している。小説はナチスの収容所からの7人の避難者のフライトに関する物語で、7つの十字架は7つの死刑宣告文を象徴している。ひとりの収容者が苦難を超えて自由を手にする箇所がテクストの山場となっている。ペンデレツキの交響曲第7番『エルサレムの7つの門』は当初オラトリオとして着想された。この作品は7楽章で書かれているのみならず、音楽学者のリチャード・ホワイトハウスによれば「様々なレベルで『7』という数字に満たされている。」7音からなるフレーズの仕組みを広範に用いること、そして同じ高さの音の7回反復を頻繁に行うことで作品がまとめられる。最後はフォルティッシモで奏される7つの和音により作品は閉じられる。 1999年に完成されたフィリップ・グラスの交響曲第5番は『レクイエム, 詩人, 顕現』という副題を持ち、その標題的意図を満たすために12の楽章を備える。グラス自身は次のように書いている。「この交響曲への私の計画は、多くの世界の偉大な『英知』の伝統を広い範囲で示すこと」であり、「世界の創造以前に始まり、地球の生命と楽園を通り抜け、未来の献辞で締めくくられる声楽のテクスト」を生み出した。21世紀のはじまりにあたる千年期は過去、現在と霊的な再生を繋ぐ象徴的架け橋になると考えているとグラスは記している。 さらに最近になって、グラスは交響曲第7番においてウィラリカの聖なる三位一体を基に哲学的、音楽的な構造を作り上げた。グラスは各楽章の表題と、それらと交響曲全体の構造との関係性について記している。「『The Corn』は母なる大地と人類の幸福の直接的な関わりを示しています(中略)『The Sacred Root』は北部及び中央メキシコの高地砂漠で見出され、霊的な世界へ通じる扉と理解されています。『The Blue Deer』は知識の書の所有者と考えられています。『知識人』になりたいと強く望むいかなる男性も女性も、根気強い鍛錬と努力により、Blue Deerに出会わなければならなくなるのです(略)」
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