栄養状態と気候変動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 09:26 UTC 版)
「蜂群崩壊症候群」の記事における「栄養状態と気候変動」の解説
ペンシルベニア州の研究報告では、予備調査の対象である全ての生産者が、問題の死亡現象の前にコロニーが「特殊なストレス」にさらされていたことを記載しているというものがあった。そのストレスとは栄養不足や水不足、あるいはどちらか一方である。この報告においては、「ストレス」という要因がCCDの全事例に共通する唯一の要因である。従って、この現象が栄養状態のストレスと相関関係にあり、健康で栄養が十分に与えられたコロニーでは影響が見られないという可能性はあるだろうと思われる。 気候変動が原因とする説もある。地球全体の温暖化によって局所的には通常より低い温度になったり高い温度になったり、また寒波の周期が遅れるためではないかと指摘される。 確かに、異常に乾燥した温暖な冬であれば多くの植物が開花しなくなる。2007年6月にカリフォルニア大学デービス校のエリック・マッセン教授は、崩壊したコロニーの多くで見られる病原菌など共通の脅威がもしないとするならば、気候変動によってカリフォルニア州は乾燥状態となり、ハチが花粉をつける花が開花せず、蜂は栄養不良となったとすれば、ミツバチが弱まったメカニズムを説明できるとして、「こんなにも暖かいのですが、この温度の頃はだいたい花のつぼみが形成され、花粉粒ができ始める頃なのです。つぼみができ、花粉粒ができるとどうなるか。受粉不能な花粉ができます。養蜂家は蜂の巣を調べて言うでしょうね、『蜂の巣にはありとあらゆる花粉があるが、ミツバチが見当たらない』と。その通りなんです。確かに花粉はあるけれど、栄養があるのでしょうか?[…]昨年の終わり、ここだけでなく、世界中の温帯あちこちで何かが起こって、ミツバチの食糧供給を混乱させたのだと考えています。他の人から違った意見が出ない限り、私は気候に責任があると考えます。[…]理由はどうあれ、我々は以前にも増して極端な状況を目の当たりにするサイクルに陷り始めたとでも言うべきでしょう。旱魃(かんばつ)はより暑く長く、嵐と洪水はより厳しくなることも考えられます。将来の状況はそれほど良い状況には向かっていませんね。」と語った。 実際2006年前半は、アメリカ合衆国で記録的な暖かさであった。他方、例年より花が早く開花していると言う者もいる。『自然の養蜂 (Natural Beekeeping)』の著者コンラッドは、気候の変動と早い春の到来が被害をもたらし、アメリカハナノキ (red maple)やネコヤナギ (pussy willows)のような植物は、ふつうミツバチが最初に花粉摂取しに向かうものであるが、春にミツバチが飛べるようになる数週間前に咲いてしまっているので、ミツバチたちは重要な花粉源に到達しながら何もできずにいるのだ、と言った。花粉源については、NASAの気象学者で養蜂家であるウェイン・エサイアス (Wayne Esaias)は、利用可能な花粉源を監視し続けている。
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