栄養と自己免疫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 21:02 UTC 版)
ビタミンD/日光 ヒトのほとんどの細胞や組織は、T細胞やB細胞を含めてビタミンD受容体を持っているので、適切なレベルのビタミンDは免疫系の調節を促進する。ビタミンDは、日光浴によって生合成され、T細胞やナチュラルキラー細胞に作用することで、免疫機能の役目を担っている。研究によると、低血清ビタミンDの低下は、多発性硬化症、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス(一般に単にループス/狼瘡と呼ばれる)などの自己免疫疾患との関連性が示されている。ただし、ループスでは光線過敏症が起こるため、患者は日光を避けるように助言されており、これがループスで見られるビタミンD欠乏の原因となっている可能性がある。ビタミンD受容体遺伝子の多型は、自己免疫疾患の患者によく見られ、自己免疫におけるビタミンDの役割について一つの潜在的な機構を示している。1型糖尿病、ループス、および多発性硬化症におけるビタミンD補給の効果については、さまざまな証拠がある。 ω-3脂肪酸 研究によると、ω-3脂肪酸(おめが-さん-しぼうさん)を適切に摂取することで、自己免疫疾患の症状の原因となるアラキドン酸の影響を打ち消すことが示されている。ヒト実験や動物実験では、ω-3脂肪酸が、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、乾癬などの多くの症例で有効な治療法であることが示唆されている。 大うつ病は必ずしも自己免疫疾患ではないものの、その生理学的症状のいくつかは炎症性であり、本質的に自己免疫である。ω-3は、うつ病の生理学的症状を引き起こすインターフェロンガンマおよびその他のサイトカインの産生を抑制する可能性がある。これは、相反する作用を持つω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の不均衡が、大うつ病の病因に関与しているという事実に起因する可能性がある。 プロバイオティクス/微生物叢 発酵乳製品に含まれるさまざまな種類の細菌や微生物叢(マイクロフローラ)、特にラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)は、マウスの腫瘍に対する免疫応答を刺激するとともに、免疫機能を調節し、非肥満性糖尿病の発症を遅延または予防することが示されている。特にシロタ株(L. casei、LcS)はその傾向が強い。LcS株は主に欧州や日本のヨーグルトや類似商品に見られ、他の地域ではほとんど見られない。 抗酸化物質 乳幼児の1型糖尿病の発症にはフリーラジカルが関与しており、妊娠中に抗酸化物質を大量に摂取することでリスクを低減できるという学説が立てられていた。しかし、1997年から2002年にかけて、フィンランドの病院で実施された研究では、抗酸化物質の摂取量と糖尿病リスクの間に、統計的に有意な相関関係はないと結論付けられた。この研究では、正確な測定やサプリメントの使用ではなく、質問票により食物摂取量をモニタリングし、それに基づいた抗酸化物質の摂取量が推定された。
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