未分化癌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/17 23:30 UTC 版)
頻度は2%以下に過ぎないが、予後は極めて不良で、甲状腺癌関連死の14〜39%を占めるとされる。乳頭癌と同様に女性に多い(1:1.5〜2)が、好発年齢はさらに高く、60歳代以上である。乳頭癌または濾胞癌が転化したものと昔は考えられていたが、現在では全ゲノム解析でそれぞれの腫瘍の遺伝子異常を検出できるようになり、濾胞癌・低分化癌・未分化癌のそれぞれが、多数の”独自の”遺伝子異常を有していたことから独自に進化をとげてきたということがわかってきた。初診時、50%の症例に遠隔転移を認め、その80%は肺転移であり、生存期間は診断から6か月以内のことが多い。。27時間で腫瘍細胞が倍加する可能性があるという報告もある。急速に増大する頸部腫大を訴えることが多く、急激に周囲へ浸潤することから、頚部の圧迫感、疼痛、熱感を覚え、皮膚発赤、嗄声、呼吸困難、嚥下困難などを来たすこともある。発熱や体重減少などの全身症状もしばしば出現する。 超音波検査では、境界が著しく不整で不明瞭な腫瘤像が見られる。その内部は低エコーでかつ不均一であり、しばしば粗大な石灰化が認められる。穿刺吸引細胞診では、結合傾向の弱いばらばらの腫瘍細胞が採取でき、異形成が著しく、盛んに分裂している様子が観察される。また、全身の炎症症状を反映して、血沈の亢進、血清CRP値の上昇、白血球数の増加を認めるが、血清ホルモン値やサイログロブリン値は原則として正常である。 早期発見できたものは、抗がん剤、手術、放射線外照射を組み合わせた複合治療を行うが、腫瘍の増大が早いため早期発見できず緩和治療に移る場合が多い。放射性ヨード治療、TSH抑制療法は効果がない。未分化癌コンソーシアムができ、多くの施設の未分化癌が登録性になった。そこで前向き研究として切除不能な未分化癌に対してパクリタキセルを投与することが提案され可決された。その後、パクリタキセルの有用性が示され、また、未分化癌に対して初めて保険適応となる薬剤であるレンバチニブが登場した。
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