月を売った男とは? わかりやすく解説

月を売った男

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 00:01 UTC 版)

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月を売った男
著者ロバート・A・ハインライン
原題The Man Who Sold the Moon
翻訳者井上一夫
アメリカ合衆国
言語英語
ジャンルSF
出版社
創元推理文庫
出版日1950年
1964年
出版形式印刷 (ハードカバー & ペーパーバック)

月を売った男』(つきをうったおとこ、原題:The Man Who Sold The Moon)は、アメリカ合衆国SF作家ロバート・A・ハインラインが書いたSF短編集である。彼のデビュー作である『生命線』が収録されている。

収録されている作品など

まえがき

著者自身が、1949年5月5日付でコロラド州コロラド・スプリングで記したもの。独自に考えた未来の年代表を作っていて、それが「未来史シリーズ」の基礎になったことなどが述べられている。

「光あれ」(Let There Be Light)

二人の科学者が、ホタルの発光をヒントにして画期的な照明システムを発明した。それは今までの2パーセントの電力で、同じ明るさが得られるものだった。逆に光をあてれば電力が得られた。やがて研究室のある建物が、電力の供給制限を受けることになった。

道路を止めてはならない(The Roads Must Roll)

大都市のあいだが「道路」と呼ばれる、動く歩道で結ばれている時代。道路は速度の違う何本ものベルトで構成されていた。最も早いものは、時速100マイルで動いている。この道路の上にはレストランも設けられ、食事をしながら目的地に行くこともできた。これを動かしている労働者の組合では、一部の組合員が地位向上を目指したストライキを計画していた。もちろんそれに反対する勢力もいた。やがて、サクラメント区の道路が突然停止した。新体制の臨時管理委員長と名乗る男からは、俺たちが実権を握ったので道路を止めたという通信が入った。技師長は技師候補生を連れて、地下の管理道をサクラメントに向かったが、ストライキをしかけた連中が待ち構えていた。ストライキに反対していた男が、説得を試みたが銃で撃たれ死亡した。候補生たちも何人か犠牲になった。

月を売った男(The Man Who Sold The Moon)

ディロス・D・ハリマン(親しい人はD・Dと呼ぶ)は、たくさんの会社を所有する大金持ちだった。彼には「月に行きたい」という夢があった。だがエネルギー衛星を事故で失い、そのころにはロケット用のX燃料は供給できなくなっていたので、化学燃料を使うロケットから造らなければならない。まずハリマンは、月の所有権を主張されないよう、月が頭上を通過する国々から「上空権」を買い取りはじめた。それと並行して、月ロケットを造るための資金集めも必要だ。彼は不用な会社を売った。月の噴火口への命名権の販売、子供たちから寄付を募るためのカードや賞状の作成、そして月の土地のエーカー単位での販売など、金につながることを次々にやった。月の周りを回ってきた宇宙切手の販売も計画された。
月ロケットの設計については、腕利きの技術者をスカウトした。その男は「金の報酬はいらない。その代わりに私も月に行く」と言うではないか。ハリマンと技術者、そして操縦士の3人が乗れるロケットの設計が始まった。だが、3人乗りのロケットは大きくなりすぎた。打ち上げ施設も巨大なものになってしまい、金がかかりすぎる。根本から考え直さなければならなかった。ハリマンは涙を飲んで、1人用ロケットの開発に舵を切った。それから様々な困難を克服し、ついにロケットは完成した。いまコロラドにある発射場には、月ロケット「パイオニア号」がそびえ立っている。操縦士を送り出したハリマンが見つめるなか、パイオニア号は炎の柱を引きながら上昇していった。すべてうまくいった。ロケットは月に着陸し、その姿はパロマー天文台の大望遠鏡でとらえられていた。やがてパイオニア号は、メキシコの砂漠に無事に帰還した。
それから年月が経った。2機目の月ロケットは「メイフラワー号」と命名され、7人が乗れるように造られた。そのうち4人は、3機目の月ロケット「コロニアル号」が来るまでのあいだ、月面で生活するのだ。ハリマンはこれらのロケットにも乗ることはできなかった。ハリマンたちの目の前で、メイフラワー号はカタパルト式発射台を登り始めた。山のカーブに沿ってだんだんと速度を増し、発射台から飛び出したところで明るい火を吐いた。ロケットは行ってしまった。ハリマンは空から目を落として言った。「行こう。やらねばならない仕事がある」。

鎮魂歌(Requiem)

「月を売った男」の続編である。ディロス・D・ハリマンは、大金持ちでありながら周囲の反対によって、自分自身は月に行ったことがなかった。時が過ぎ、高齢になったハリマンは、生きているうちに必ず月に行くと決心した。秘密裡にパイロットを雇い、宇宙船も手に入れた。パイロットからの「その身体では加速度に耐えられない」という忠告を振り払い、ハリマンは宇宙船に乗り組んだ。地球を離れるときの加速にも、彼は耐えることができた。やがて月に近づき、宇宙船は着陸態勢に入った。

生命線(Life-Line)

ピネロ博士は、人間の寿命を測定する装置を発明した。周囲ではその理論に疑問の声があったが、一人の男の死亡する日時を予言しそのとおりになった。これをもとに、博士は事業を起こし大金持ちになったのだが、生命保険会社には大打撃となり、彼を憎む者も少なからずいた。博士は一流の科学者たちを招き、自分も含めた全員の死亡日時を予言し、それを書いた紙を科学アカデミーが管理する金庫に入れた。誰かが死んだときに、金庫を開けて確認することが申し合わされた。

書誌情報

『月を売った男』 井上一夫訳 創元推理文庫SF 1964年10月

脚注

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月を売った男(The Man Who Sold The Moon)

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「月を売った男」の記事における「月を売った男(The Man Who Sold The Moon)」の解説

ディロス・D・ハリマン親しい人はD・Dと呼ぶ)は、たくさんの会社所有する大金持ちだった。彼には「月に行きたい」という夢があった。だがエネルギー衛星事故失い、そのころにはロケット用のX燃料供給できなくなっていたので、化学燃料を使うロケットから造らなければならない。まずハリマンは、月の所有権主張されないよう、月が頭上通過する国々から「上空」を買い取りはじめた。それと並行して月ロケット造るための資金集め必要だ。彼は不用な会社売った。月の噴火口への命名権販売子供たちから寄付募るためのカード賞状作成、そして月の土地エーカー単位での販売など、金につながることを次々にやった。月の周り回ってきた宇宙切手販売計画された。 月ロケット設計については、腕利き技術者スカウトした。その男は「金の報酬いらないその代わりに私も月に行くと言うではないかハリマン技術者、そして操縦士の3人が乗れロケットの設計始まった。だが、3人乗りロケット大きくなりすぎた。打ち上げ施設巨大なものになってしまい、金がかかりすぎる。根本から考え直さなければならなかった。ハリマンは涙を飲んで1人用ロケットの開発に舵を切った。それから様々な困難を克服し、ついにロケット完成した。いまコロラドにある発射場には、月ロケットパイオニア号」がそびえ立っている。操縦士送り出したハリマンが見つめるなか、パイオニア号は炎のを引きながら上昇していった。すべてうまくいった。ロケットは月に着陸し、その姿はパロマー天文台大望遠鏡でとらえられていた。やがてパイオニア号は、メキシコ砂漠無事に帰還した。 それから年月経った。2機目の月ロケットは「メイフラワー号」と命名され、7人が乗れるように造られた。そのうち4人は、3機目の月ロケットコロニアル号」が来るまでのあいだ、月面生活するのだ。ハリマンはこれらのロケットにも乗ることはできなかった。ハリマンたちの目の前でメイフラワー号カタパルト式発射台登り始めた。山のカーブ沿ってだんだんと速度増し発射台から飛び出したところで明るい火を吐いたロケット行ってしまった。ハリマンは空から目を落とし言った。「行こう。やらねばならない仕事がある」。

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