景観調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 07:54 UTC 版)
景観調査・景観観察は、フィールドワークの方法の1つである。カメラで景観を写真撮影・ビデオ撮影する、観察により発見した景観要素を文字やスケッチによって野帳(フィールドノート)に記録する、地図上に書き込む、といった調査手法を指す。特に地理学においては地図で表現することが多く、具体的には土地利用を示すことで景観を表現する。景観を観察することは、観察する場所の知識を持ち合わせていなくとも、その土地の人と言葉が通じなくとも、その場所の姿や現地の人の生き様を知ることが可能である。 景観は視覚的な様相であるが、ぼんやり眺めれば良いというものではない。地理学者の戸所隆は、景観観察の留意点として以下の7つを挙げた。 例外・偶然的な現象でなく、本質的な現象を把握 現象の存在理由を考える 機能的観察の裏付けを行う 地域の構造は中心と周辺から成ることに注意 全体と部分の相互関係を把握 ベースマップを用意 観察事項はすぐに記録し、当日中にまとめる 地理学は視覚に負うところが大きく、フィールドワークや野外巡検 (field excursion) は地理学のカリキュラム上重視され、必修科目であることが多い。アメリカのジョン・フレーザー・ハート (John Fraser Hart) は、1998年に「景観の研究は最も健全な地理学の出発点である。地理学者の好奇心は何よりもまず見えるものによって呼び覚まされる。」と述べ、日本の地理学者・山本正三もその土地に住む人々の現実の姿を捉える上で景観観察が重要である旨を語っている。地理学系の国際的な学会においても本会議の前後に会場周辺で巡検が行われ、世界の研究者が議論し合いながら景観調査を行う機会が設けられている。 しかしフィールドワークを重ねて観察眼を育てることは、逆に知覚を狭めてしまうおそれがあり、例えばスイスで氷河作用を受けた景観の観察眼を養ったアガシス (Agassiz) という学者は、氷河作用を受けていないはずのブラジル・リオデジャネイロ近隣でも氷河作用の痕跡を見出した、という出来事も起きている。
※この「景観調査」の解説は、「景観」の解説の一部です。
「景観調査」を含む「景観」の記事については、「景観」の概要を参照ください。
- 景観調査のページへのリンク