映画技法の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 03:09 UTC 版)
現在まで、この映画が語り継がれているのは、主にこの映画の画期的な技術面からである。グリフィスは映画芸術の基礎を築いた人物として映画史に記録されているが、バイオグラフ社時代の短編作品から試みていたカメラの使い方、各画面の迫力、各種の動的な効果、観衆に訴える的確な編集法などを、この作品で一気に開花しているのである。 第1に、編集の素晴らしさである。当時のそれまでの映画はワンシーンワンカットという、たとえて言えば、舞台上での俳優の動きをカメラ側はひたすら動かず固定する手法で撮られていたのである。この作品では一つのシーンを複数のショットで撮ることで、画面内での動きが実に多彩であるばかりでなく、各画面をとてもよく考えて、それらを計算して繋ぐことによって、映画上で絶えずストーリーが流れていることに成功している。 モンタージュにも工夫を凝らしており、並行モンタージュとも呼ばれるクロスカッティングを駆使していることが一つの特徴であり、黒人たちに襲われる白人たちと救出に向かうKKKのシーンなどでこの技法が用いられ、緊迫感を生み出している。ほかにも複数のショットを総合的に組み立てて全体の出来事を見せるという技法を使って、ストーリーの時間の連続性を保てるだけでなく、迫力やエモーショナルな効果、サスペンス効果を盛り上げることにも成功している。 第2に、多くの映画技術を使用して表現したことである。上記のクロスカッティング以外にもカットバック、フラッシュバック(物語の現在より過去に起きたシーンを挿入すること)、クローズアップ、パン(カメラを左右に動かすこと)、移動撮影などがグリフィスが本格的に使った技法で、これらの技法を使いこなしてシーンを構成し視覚的効果を上げている。効果的に用いている。 第3にショットの距離である。1シーンをロングショット、ワイドショット、標準、バストショット、クローズアップなどのそれぞれ距離の違うショットに分解して、しかもそのショットの長さも変化させ、これを組み立てることによって迫力のあるシーンを編集できたのである。中にはロングショットと極端なクローズアップを交互に繋ぎ合わせる場面も見られる。 また、当時のフィルムはオルソクロマティック・フィルムといい、階調度は低いが近景から遠景までピントを合わせることができたので、これらの様々な撮影技法にはうってつけであった。 第4に、アイリス・アウト(絞りを開く)の活用である。これは、画面の一部だけから絞りを開いて全体の光景を見せるという技術である。この作品で使われたのは非常に原始的な方法で、レンズの前に穴を開けた紙を置いて、それを破るか外して撮影したと推定される。これは、1つの事象に対してその原因を劇的に提示したのみならず、心理的な効果も狙ったものである。 第5に、シンボリックな表現を多用している、ということである。これは、画面にある事物を置いて、登場人物の意識なり状況を象徴させるという方法である。これも、セルゲイ・エイゼンシュテインらが後に多用した方法である。
※この「映画技法の特徴」の解説は、「國民の創生」の解説の一部です。
「映画技法の特徴」を含む「國民の創生」の記事については、「國民の創生」の概要を参照ください。
- 映画技法の特徴のページへのリンク