日本初の大規模アーチダム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 14:26 UTC 版)
「上椎葉ダム」の記事における「日本初の大規模アーチダム」の解説
計画の段階で高さが100メートルを超える大規模なものであったことから、日本発送電は海外技術顧問団(OCI)にダムの型式に関する助言を依頼した。当初日本発送電側は塚原ダムの経験もあったことから重力式コンクリートダムの型式を想定していたが、OCIの出した結論は両側岩盤が堅固な花崗岩であることから経済性に鑑みアーチ式コンクリートダムが妥当であるとの結論を出した。これに対し日本側は大いに困惑したという。 アーチダムについては海外で大規模なものが建設されていたが、日本ではアーチダムの建設は幾つかの理由で行われていなかった。一つは耐震性の問題。有数の地震国である日本では地震に対するアーチダムの影響性が未知のものであった。このため特に地震が頻発する地域(日向灘に沿う宮崎県など)で大規模アーチダムを建設することに不安があったこと、二つ目に地盤に対する基礎的な対策や設計理論が発展途上であったこと、三つ目は特に多雨地域である九州に該当するが、洪水処理能力に対する不安が払拭できなかったことが理由に挙げられる。既に建設省中国四国地方建設局が島根県の斐伊川本流に三成ダムが着手されていたが、100メートルを超えるアーチダムの経験はなかった。だが、OCIはアーチダムが最も地盤の点でダムサイトに適しているとの結論を出し、最終的に日本で初となる大規模アーチダムが着手されることとなった。 だが安全面で一抹の不安が払拭できない日本発送電側は、ダムの設計に際して様々な変更を行った。洪水処理のための洪水吐きに関しては、OCI案の中央越流方式ではなく日本案のスキージャンプ式洪水吐きを採用、両岸から放流した水が跳ねて谷の中央部でぶつかることで巨大なエネルギーを相殺し堤体への影響を最小限にしようとした。さらに極めて堅い良好な岩盤であったが、ダム堤体の厚さをより厚くした「厚肉アーチダム」としさらに現在の主流であるドーム型ではなく直立した円筒型のアーチダムを採用することで、貯水時の莫大な水圧や地震に耐えうる型式とした。それだけ設計に慎重を期したことが窺える。
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