日本の保税地域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 20:30 UTC 版)
日本の場合、保税地域は五種類が定められている。指定保税地域のみ財務大臣が指定し、それ以外の保税地域は税関長の許可により成立する。 指定保税地域 財務大臣が指定した国や自治体所有の土地・建物で、港湾や税関空港などに隣接し、外国貨物の積卸しや蔵置を行い、迅速に輸出入通関手続を済ませるために指定されている。公共の施設であり一部の者が長期間独占するのを防ぐため、蔵置期限は1か月と短い。 保税蔵置場 税関長の許可を受けた民間所有の施設(倉庫、土場等)。以前は短期的な保管のために保税上屋と長期的保管のための、保税倉庫の区別があったが、平成6年の関税法改正で保税蔵置場に一本化された。外国貨物のままで原則3か月、蔵入承認を受けると最初の承認から2年、場合によってはさらに期間を延長して蔵置できる場所。輸出入される貨物の一時保管、日本を経由し第三国へ向かう積戻し貨物の保管、その他市況を見てから輸入手続きして引き取る金属・繊維などの貨物の蔵置に使われる。変わったところでは未通関の外国映画フィルムを扱う試写室が保税蔵置場になっていたケースが過去にあった(日本語字幕をマスターフィルムに刻み付ける必要があったため)。 保税工場 外国貨物の加工・製造や改装、仕分などの「保税作業」をする場所として税関長が許可した場所。加工貿易振興のための制度で、保税工場内では外国貨物を関税を払わないで加工・製造し外国に積み戻すことができる。搬入後3か月以内に税関長の移入承認を受けることで保税作業を行えるようになり、蔵置期間はその保税工場で承認を受けた日から2年間である。 上記の保税蔵置所と同じく、未通関の外国映画フィルムやビデオテープなど映像記録メディアをダビングするために、映像制作会社が保税工場の許可を取得しているケースがある。 保税展示場 博覧会場や見本市会場など、国際的なイベントの行われる場所で、外国から来た製品や産品を関税を払わず外国貨物のまま蔵置するほか展示・使用もできる場所。外国貨物の販売、消費等は行えず、行う場合は輸入の通関手続をとる必要がある。税関長が指定した期間のみ許可される。大阪万博、つくば科学博覧会が保税展示場の許可をされており、東京モーターショー等の大型展示会も開催の都度許可されている。また、2019年8月30日に開業した愛知県国際展示場は日本初となる常設の保税展示場が用意されている。 総合保税地域 一団の土地等で蔵置、加工・製造、展示・使用をすべてできる場所として税関長が許可した施設。中部国際空港や横浜港国際流通センターがこれに当たる。 この他、港或いは空港から保税地域(工場や倉庫)までの間を外国貨物のまま輸送できる保税運送(OLT, Over Land Transport)の制度もある。 輸入促進のために1992年度から「輸入促進地域」(Foreign Access Zone、FAZ)が設定されていた。港湾・空港周辺で公的施設(卸売市場、荷捌き施設、展示場)が集積された地区が政府によってFAZに指定されていたが、2006年5月に制度は廃止された。
※この「日本の保税地域」の解説は、「保税地域」の解説の一部です。
「日本の保税地域」を含む「保税地域」の記事については、「保税地域」の概要を参照ください。
- 日本の保税地域のページへのリンク