日本に対する主権侵害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 15:43 UTC 版)
同事件について、日本政府は主権侵害に対する韓国政府の謝罪と、日本捜査当局による調査を要求していたが、同年11月の金鍾泌(キム・ジョンピル)首相(当時)の訪日と1975年7月の宮澤喜一外相(同)の訪韓で政治決着を図り、韓国側の捜査打ち切りを確認したが、韓国政府はKCIA職員かどうかも認めず不起訴処分とし、国家機関関与を全面否定していた。 後年、大統領になった金大中はこの事件を一切不問にするとの立場を明らかにし、韓国政府に対する賠償請求などに発展するおそれのある真相究明を露骨に牽制した。また、1973年11月2日に行われた田中角栄首相(当時)と金鍾泌首相(当時)との会談の内容を収めた機密文書が盧武鉉政権により公開(2006年2月5日)され、日韓両政府が両国関係に配慮した政治決着で穏便に事を済ませようとしていたことが明らかになった。『文藝春秋』2001年2月号の記事によると「田中角栄首相が、政治決着で解決を探る朴大統領側から少なくとも現金4億円を受け取っていた」と現金授受の場に同席した木村博保元新潟県議が証言している。 また娘の田中真紀子元外務大臣によると、事前に田中角栄は「殺人をしないこと」を条件に、拉致することを了承済であったという。但し角栄の当時の対応については「金大中を殺害するつもりなら爆破するぞ」と強く殺害の中止を求めたという説と、事なかれ主義的に拉致を認めたという説がある。 2006年7月26日韓国政府は韓国中央情報部 (KCIA) の組織的犯行だったとする結論を出し、国家機関が関与したことを初めて政府として認めた。2007年10月14日北海道新聞によると、「当初金氏を日本の韓国系暴力団に依頼して暗殺することがKCIA内で検討されたが、成功が困難と判断して断念したことを元KCIA職員が証言した」との記事を掲載した。なお、元朴大統領の側近はこの証言を否定している。拉致の目的は金の海外での反政府活動を抑制するためだったと別の元KCIA職員が証言し、殺害計画の事実を否定した。 同年10月24日、国家情報院 (NIS) の過去事件真実究明委員会は、当時のKCIAによる組織的な犯行だったとする報告書を発表し、韓国政府として事件への関与を初めて公式に認め、柳明垣駐日大使は日本国に陳謝をした。 なお、これに対し日本国政府は、日本の主権侵害に対する公式謝罪と日本の捜査当局による関係者の聴取を求めたが、2021年現在まで正式な韓国政府による謝罪はない。
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