提案された原案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 04:27 UTC 版)
「国際天文学連合による惑星の定義」の記事における「提案された原案」の解説
IAUは、2006年8月16日に原案を公表した。この案は、委員会の3つの意見のうち2番目に基づくもので、次のように述べる。 惑星は、(a) 自己の重力が剛体力に打ち勝ち、静水圧平衡にあると推定される十分な質量を持ち、(b) 恒星の周りの軌道にあり、恒星でも惑星の衛星でもない天体である。 この定義により、次の3つの天体が惑星と認められるようになった。 ケレスは発見時から惑星と考えられてきたが、後に小惑星として扱われるようになった。 冥王星-カロン系は、二重惑星と考えられている。 エリスは、外太陽系の散乱円盤天体である。 物理的性質が詳しく分かっていなかったさらに12個の天体もこの定義の下に連なる可能性があった。この2番目のリストのうちいくつかの天体は、他よりも「惑星」として認められる可能性が高かった。メディアで主張されていることをよそに、この定義では、太陽系に12個の惑星だけを残しておくことを必要としない。セドナとエリスの発見者であるマイケル・ブラウンは、太陽系内の少なくとも53個の既知の天体が定義に当てはまる可能性があり、完全な探索が行われれば、恐らくさらに200個は見つかるだろうと述べている。 この定義では、2つの天体がそれぞれどちらも惑星の基準を満たし、系の共通重心が両方の天体の外にある1対の天体を二重惑星としている。冥王星とカロンは、太陽系で唯一の既知の二重惑星である。月のようなその他の惑星の衛星でも静水圧平衡にあると考えられるものがあるが、系の共通重心がより重い天体の内側にあるため、二重惑星とは定義されていない。 「小惑星」という用語は廃止されて「太陽系小天体」と"pluton"(プルートン)という新しい分類に置き換えられた。前者は、「球形」の閾値に満たない天体、後者はかなり偏平で傾いた、軌道周期200年以上(即ち海王星の軌道より外側)の天体に適用される。冥王星は、この分類のプロトタイプである。「準惑星」という用語は、太陽の周りを公転する8つの「古典的惑星」より小さい全ての惑星に当てはまるが、IAUの公式の分類ではない。IAUは、原案にあった惑星と褐色矮星の区別については勧告しなかった。提案に対する投票は、2006年8月24日に予定された。 このような「惑星」という用語の再定義により、太陽系外縁天体のハウメア、マケマケ、セドナ、オルクス、クワオアー、ヴァルナ、(55636) 2002 TX300、イクシオン、(55565) 2002 AW197や小惑星ベスタ、パラス、ヒギエアの分類も変える可能性があった。 8月18日、世界最大の国際的な惑星科学の専門家組織であるアメリカ天文学会惑星科学部会は、この原案を承認した。 IAUによると、球形条件を満たすためには、一般的に最低でも5×1020kgの質量、即ち最低でも直径800kmが必要となる。しかし、マイケル・ブラウンは、この数字は小惑星のような岩石質の小惑星にしか当てはまらず、カイパーベルト天体のような氷天体では、恐らく直径200kmから400kmでも静水圧平衡に達すると主張する。全ては天体を構成する物質の固さに依存し、それは内部温度の影響を強く受ける。土星の衛星メトネの形は、土星からの潮汐力と衛星の重力のバランスを反映しており、メトネのわずか3kmの直径は、メトネが氷の綿毛で構成されていることを示唆している。
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