捜査・司法機関による刑事立件・訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:46 UTC 版)
「医療崩壊」の記事における「捜査・司法機関による刑事立件・訴訟」の解説
一部の医師・医療機関の犯罪や医療過誤が、マスメディアに大きく取り上げられることで医療不信を呼ぶとともに、他方で、堀病院強制捜査や大淀町立大淀病院事件、杏林大病院割りばし死事件、福島県立大野病院産科医逮捕事件など、多くの医療従事者にとっては、遺族側が家族を失ったやり場のない怒りと悲しみを、医師などへの責任転嫁によって紛らわしたいだけで、医療過誤・犯罪と思えないことが、マスコミ等で医療過誤である・犯罪であると騒がれ、さらには刑事事件化されるようになってきたことも医療崩壊の一因だと指摘されている。実際に、福島県立大野病院産科医逮捕事件は、2008年8月に無罪が確定しており、大野病院事件について日本外科学会は哀悼の意を表すとともに次のような声明を発表している。 この地区の病院唯一の産婦人科医として誠心誠意診療に当たっていた医師に対して、調査委員会が報告書を作成し、県としての処分も終えているにもかかわらず、「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」を理由として逮捕勾留し、より良い医療を行おうとする医師の善意と患者のための自由な医療を踏みにじる検察当局に抗議の意を表します。このことがひいてはリスクの多い外科系臨床科に属する医師の減少をもたらし、また患者のための真の医療から自己防御のための医療へと変化させ、また全国への公平な地域医療の分配をも不可能にさせて、日本の医療の荒廃をもたらしかねない事に我々は警告を発したいと考えます。 医師個人を刑法で裁くことは他の先進諸国ではみられない。原因の究明とともに萎縮医療を防ぐためである。小松によれば、医療を含む自然科学分野における合理性は、グローバルなレベルで自律的に発展し分野毎に帰納的に形成されているのに対して(帰納法)、政治や法、道徳などにおけるローカルな合理性は規範的かつ演繹的に形成されるものであり、両者が異なるシステムで動いているにもかかわらず、グローバルな医療世界に日本の国内司法を持ち込もうとすることが医療問題解決の障害になっていると指摘している。さらに小松は、医療者の自浄作用を伴う自律性を確立した上で、「医療臨調」のような国民的会議を組織し、医療とはどうあるものなのか合意を形成し、具体的方策を立て患者と医療側の「相互不信」解消を図るべきだと提案している。
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