拵と白鞘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/02 06:38 UTC 版)
刀身を柄と鞘に納め、鐔や吊り金具(足金物)、補強用の諸金具を取り付け、木地には漆を塗るなどして、個々の刀剣外装として仕上げられた一連のものを拵(こしらえ)と言う。拵には時代や地方によって共通した特徴を持つ一群があり、それらを分類して~拵と呼ぶ。代表的なものでは、肥後熊本藩で江戸時代を通じて作られた肥後拵(ひごごしらえ)があり、派手さは無いものの、茶道に至るわび・さびの概念を取入れた、渋く味のある拵である。また、天正年間を中心として作られた、特徴的な打刀拵の一群は天正拵(てんしょうごしらえ)と呼ばれる等、これらの他にも特徴的な拵は複数存在する。 一方、朴の木の柄と鞘のみで白木のまま仕上げられ、柄には目釘(1)を入れただけの外装を白鞘(しらさや)と言う。白鞘は刀剣類を保存することに特化した鞘で、白木のままのため、鞘内の湿度が調整され、刀身が錆びにくいと言われる。それでも手入れの不備などで錆びたときには、鞘を合わせ目から割って、中の掃除をすることがある。そのため、白鞘は飯粒を練って作った糊で貼り合わせてあるだけで、比較的簡単に割れるようになっている。任侠映画などでは、白鞘のままの刀で格闘する場面が見られるが、当然激しい使用に耐えられるものではない。白鞘の歴史はそれ程古くはなく、江戸時代も後期になって作られ始めたと言う。大名等、蔵刀が多い上級の武家では、武士の表道具と言われる刀を大切に保存するために、白鞘を用い始めたのであろう。しかし、一般的に普及したのは明治の廃刀令以降と思われ、それまで武士が身に着けていた刀が、一部分の軍用の他には無用の長物となり、保管の対象になってしまった。 元来、刀身と外装は一体のもので、分けて考えられることは無かった。「黒漆の太刀」と言った場合、刀身を含めた全体のことを言っているのであって、「黒漆を塗った太刀拵」の意味ではない。太刀や刀という区別も、外装が持つ属性に起因するもので、刀身自体に互換性が無いほどの差異がある訳では無かった(もちろん、それぞれに適した刀身の姿があり、制作時にはそれに則って作られている)。それが、刀身は白鞘に入れ、外装にはつなぎ(2)を入れて別に保管するようになった為、分けて呼ぶ必要が生じ「拵」と呼ばれるようになった。 目釘(めくぎ):柄から刀身の茎が抜けないようにする為、双方を貫通して差し込まれた、長さ2~3センチ程の釘状の部品。白鞘では竹や水牛の角、拵ではその他に金属で作られることもある。 つなぎ:繋ぎの意。本来刀身が入っていることによって連結されている柄と鞘に、刀身の代わりに入れられる木製の刀形。竹光と言われることもあるが、現在では殆ど朴の木で作られるため、単につなぎと呼ばれる。
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