拡散と利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 14:37 UTC 版)
冷戦中のソ連は、当時の友好国への軍事援助として多数のスカッドBを輸出した。 スカッドが初めて実戦利用されたのは、1973年の第四次中東戦争だった。エジプト軍は休戦の直前にイスラエルへ4発のスカッドBを発射した。1発はイスラエルが占領していたシナイ半島のアリーシュ港に、2発はイスラエル軍のスエズ運河における橋頭堡を目標とした。 スカッドは基本的なロケットに近く、比較的簡素な構造のため、技術力の乏しい国でもある程度の水準があれば複製が可能で、一部の国では模倣品や拡大改造版が製造された。1970年代にソ連と対立し始めたエジプトは中国と北朝鮮にスカッドを無断で与え、後に中国と北朝鮮の技術者はエジプトでスカッドの改良にも関わっている。北朝鮮はスカッドを基にして射程1,500km以上の準中距離弾道ミサイルノドンを開発した。北朝鮮は、弾道ミサイルの輸出を外貨を獲得する手段として用いており、ソ連が輸出していなかったイランやパキスタンなどにもスカッドとノドンを輸出しており、イランのシャハブやパキスタンのガウリ(英語版)などはその技術をもとにつくられた。 1986年に行われたアメリカ軍のリビア爆撃の際には、ソ連からスカッドを導入していたリビアから報復としてイタリアのランペドゥーザ島に置かれていたアメリカ沿岸警備隊のLORAN施設にスカッドが発射されたが、目標を外れた。 イラン・イラク戦争では双方の国によって大量のスカッドが利用された。イラクはソ連から購入したスカッドとその派生型アル・フセインを520基発射し、イランはリビアから購入したスカッドを177基発射した。双方の首都が目標となり、市民の犠牲者も発生した。 ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻では2,000基におよぶミサイルが発射され、また、湾岸戦争ではアル・フセインがイラクからサウジアラビアに45発、イスラエルに40発が発射され、アメリカ軍はパトリオットミサイルを用いて迎撃した。チェチェン紛争でもロシア軍が使用している。2015年6月にはイエメンから、同国の内戦に介入したサウジアラビアに対して1発が発射され、撃墜されたと報道された。
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