扶養義務に関する調停 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
「家事調停」の記事における「扶養義務に関する調停 (日本)」の解説
詳細は「養育費の算定基準」を参照 日本の民法は、配偶者間の婚姻費用分担義務(760条)及び未成熟の子に対する扶養義務(766条1項)を定めるが、具体的な金額の算定方法を指示していない。これらの扶養義務の内容は、当事者間の合意、家事審判又は家事調停(婚姻費用分担調停、養育費調停)によって、金額の定まった具体的権利義務になる。婚姻費用分担金支払義務や養育費支払義務を定める家事審判及び家事調停は執行力を持つが(前述)、当事者間の合意に執行力を持たせるには、別に債務名義を取得する必要がある。 扶養義務の内容に争いがあるときは、裁判実務は、裁判官の私的研究会が発表した 養育費・婚姻費用算定表 に従うことが多い。この算定表は、扶養義務者が扶養義務を負う未成年の子(0人~3人)を全員扶養権利者が監護していることを前提として、婚姻費用と養育費とに分けて、未成年の子の年齢及び人数に応じて合計19の表が用意されており、扶養権利者及び扶養義務者の経済力(給与収入又は事業所得)によって扶養義務者の標準的な支払額を割り出せる仕組になっている。この算定表は、利用方法が単純で非専門家にも利用可能であることが評価されているが、合理性や柔軟性に欠けるし扶養義務者の負担額が低すぎるとの批判も強い。 扶養義務は家事事件手続法別表第二に掲げる事項なので(同表二項、三項、民法760条、766条2項、3項)、扶養義務に関する調停が不成立により終了したときは、家事審判の手続が始まる。そして、上述のとおり、扶養義務の内容には公表された目安があるので、当事者は家事審判の結果を予測しやすい。そのため、扶養義務に関する調停は成立したり調停に代わる審判が確定する割合が高い。 調停で婚姻費用分担金、養育費又は扶養料の定期的な支払義務が定められたときは、一度でもその不履行があれば、権利者は、義務者の給料債権や役員報酬請求権の差押えを一度申し立てれば、その後に支給日を迎える給料債権等から継続的に婚姻費用分担金等を回収することができる(民事執行法151条の2)。また、上記の権利者は、給料、俸給、賞与などの債権の手取額の2分の1(手取額が66万円を超えるときは手取額から33万円を控除した残額全部)を差し押さえることができ、退職金債権の手取額の2分の1を差し押さえて婚姻費用分担金等を回収することができる(同法152条3項。通常はそれぞれ4分の1のみが差押え可能)。さらに、上記の権利者は、間接強制(義務者の債務不履行に対して比較的簡易な手続で制裁金の支払を命じる制度)を申し立てることもできる(同法167条の15第1項)。
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