悲運の交響曲とは? わかりやすく解説

悲運の交響曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/13 15:22 UTC 版)

交響曲第4番 (ショスタコーヴィチ)」の記事における「悲運の交響曲」の解説

本作完成後、数奇な運命をたどることになる。1936年1月から2月にかけてオペラムツェンスク郡のマクベス夫人』とバレエ明るい小川』が、ソビエト共産党機関紙プラウダ』で批判された(プラウダ批判)。当時ショスタコーヴィチ置かれ状況決し安泰ではなくスターリン粛清下、近親者友人たち相次いで投獄され、彼自身トゥハチェフスキー事件連座して当局事情聴取を受けるほどであったこの頃ショスタコーヴィチは「たとえ両腕を失おうとも、歯でペン銜えてでも作曲続ける」と悲壮な覚悟述べていた。 交響曲第4番同年12月11日シュティードリー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団初演を行うことも決まっていたが、シュティードリーによれば最終リハーサルでは第3楽章至ってオーケストラ楽曲に対して表立って抵抗始め意図的に手を抜いたという。楽団員騒然とした集会開いた後、ショスタコーヴィチ自身楽譜回収して出て行っとロディオン・シチェドリン語っている。また音楽学者のイサーク・グリークマンによれば当時音楽界過激派の間にはショスタコーヴィチ過去批判無視した形式主義とんでもない交響曲書いたという噂が広まっており、ある日リハーサル作曲家同盟書記共産党組織本部属す役人風の男と共に現れその日リハーサル後にフィルハーモニー責任者部屋呼び出されショスタコーヴィチは、20分ほどして戻ってくると意気消沈してずっと黙っていたが、やがて無表情に交響曲演奏されない。執拗な忠告により引っ込められた」と語り作曲者本人によって撤回され扱いになったのだという。その後1961年12月30日初演が行われるまでの25年間、本作日の目を見ることはなかった。 本作初演見送った後に交響曲第5番作曲し、その名誉は回復された。 しかしショスタコーヴィチ本作を、「失敗作オーケストラ演奏されなかったが、私自身この曲のいくつかの部分好きだ」と評しているように放棄せず、チャンスがあれば公演を行うつもりであった1960年代には、すでに総譜紛失していたが、モスクワ・フィルハーモニー協会芸術監督グリンベルクモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者キリル・コンドラシンらがパート譜をもとに復元し初演運びとなった。なお、作曲者自身初演親友ムラヴィンスキー頼んだ謝絶され結局コンドラシンによって初演運びとなり、これ以後コンドラシンショスタコーヴィチ交流生まれた。 以上のような経緯から、本作長らく正当な評価下されず、巨匠隠れた名作とされていた。ショスタコーヴィチ生前録音され演奏はわずかで、そのほとんどがソ連または東ドイツ指揮者オーケストラよるものだった。しかし近年になってその真価再評価され演奏・録音機会多くなってきている。 なお、完成当時指揮活動レニングラード訪れていたオットー・クレンペラーも、師マーラーの影響の強いこの作品大い惹かれ次に予定していた南米でのコンサート取り上げることを作曲者約束していたが、上記理由立ち消えとなった最晩年ショスタコーヴィチは「プラウダ批判の後、政府関係者懺悔して罪を償えしつこく説得した拒絶した代わりに交響曲第4番書いた若さと体力がプレッシャー勝ったのだ」と証言している。

※この「悲運の交響曲」の解説は、「交響曲第4番 (ショスタコーヴィチ)」の解説の一部です。
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