応用例・特徴など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 08:00 UTC 版)
量子ドットは、その特異な電気的性質により、特に単電子トランジスタ、量子テレポーテーション、量子ドットレーザー、量子ドット太陽電池や量子コンピュータなどへの応用が期待されている。そのためには大きさのそろった量子ドットを作製する必要があるが、現在のところ有効な手段は知られていない。InAs量子ドットを活性層に用いた半導体光増幅器は現在主に用いられている量子井戸構造を用いたものよりも周波数特性がよいため、実用化が期待されている。この応用はドットサイズがそろわずゲイン波長域が広いことが利点になっている。 量子ドットは、蛍光色素としてバイオ研究にも使用されている。この場合、量子ドットはポリマーコーティングされ水中で使用しやすいように作成されている。このポリマー材質は、各製造会社によってまちまちであり、使用者には公開されていないのが現状である。このコーティングされた量子ドットは、2次抗体やストレプトアビジンなどと共役され蛍光染色用色素として販売されている。染色に量子ドットを用いる利点は、長時間の励起光照射でもほとんど退色しないことあり、一つの細胞に関して複数の画像スライスを撮るような場合に絶大な効果を発揮する。さらに励起スペクトルが広範囲に及ぶため、単一励起波長(UV領域など)により蛍光波長の違う量子ドットを用いて同時に複数の蛍光を得ることができる。UVなどの励起光を使用した場合、ストークスシフトが大きくなるため、バックグラウンドが低く抑えられる。量子ドットの蛍光強度も強いため、蛍光フィルターにおける許容波長を±10-20 nmに抑えることができ、バックグラウンドを抑えるとともに、同時に使用できるフィルター(色)数を増やすことも可能である。 また、量子ドットは3次元的な量子井戸でもあり、電子が立体的にトラップされ擬似的な原子として振舞う。特に球対称の量子ドットを作製した場合は、準粒子としての電子・正孔が原子に似た殻構造を示す。 量子ドットのコアに使われるカドミウムは汚染物質として規制されているため、テレビや太陽電池などの民生向け製品として大量生産に供されるためにはカドミウムを使わない「カドミウムフリー量子ドット」の発明が急務となっていた。「カドミウムフリー量子ドット」は2010年代中頃に発明され、量子ドットを用いた民生品の実用化が始まった。ソニーがアメリカのQD-VISIONと共に2013年発売した液晶テレビ「XBR-X900A」には微量のカドミウム(テレビ1台あたり10mg以下)が使われているが、RoHS指令や使用国の規制値はクリアしている。
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