対者敬語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 09:10 UTC 版)
対者敬語(상대높임법)は、話し手が特定の終結語尾(文の言い切りの形を作る語尾)を使うことによって聞き手を高めたり、低めたりする文法範疇である。日本語文法の常体・敬体(丁寧語)に相当するものを総合している。聞き手との年齢差や社会的地位の差、会話している場面などに応じて異なる語尾が使われる。 公の場面などで使われる格式体と、ラフな会話で使われる非格式体に分けられるが、格式体に4つのレベル(ヘラ体・ハゲ体・ハオ体・ハシプシオ体)、非格式体に2つのレベル(ヘ体・ヘヨ体)が存在する。格式体において目上に使えるのはハシプシオ体だけであり、中間の2体は目下の聞き手を丁重に扱う表現である。格式体ではそれぞれ全く異なる語尾が使われるのに対し、非格式体の語尾は共通しており、ヘ体の語尾に요(ヨ)を接続するだけで目上として高める表現となる。また敬語ではないが、中和体(ハラ体)という文体もあり、例えば本や雑誌などで不特定の対象を聞き手(読み手)とし、相手を高めるのでも低めるのでもなく、中和していることを表すために設けられたものである。 これらの終結語尾の例を文体ごとにまとめると以下のようになるが、その文体名は「하다」(「する」などに相当)の各命令形によって命名されている。ネイティブ以外の者にとってこれらを正確に使い分けるのはなかなか難しいので、初学者はハシプシオ体で通した方が無難であろう。 レベル平叙形感嘆形疑問形命令形勧誘形格式体ヘラ体とても低める -다 -구나, -어라 -(느)냐, -(으)냐, -니, -지 -어/아라 -자 ハゲ体少し低める -네 -구먼 -는가, -(으)ㄴ가, -나 -게 -세 ハオ体少し高める -(으)오/소 -구려 -(으)오/소 -(으)오/소 -(으)ㅂ시다 ハシプシオ体とても高める -(스)ㅂ니다 -(스)ㅂ니까 -(으)ㅂ시오, -(으)십시오 -(으)시지요 非格式体ヘ体広く低める -어/아, -지 -어/아, -군 -어/아, -지, -냐, -니, -디, -(으)ㄹ까 -어/아, -지 -어/아, -지 ヘヨ体広く高める -어/아요 -어/아요, -군요 -어/아요 -어/아요, -지요, -시지요/-시죠 -어/아요, -시지요/-시죠 中和体ハラ体- -다 -다 -(으)냐 -(으)라 -자 格式体- 硬く直線的な表現。公の場など格式を改めて話すときに使われる。日常会話のなかで使うと聞き手に固い印象を与え、心理的距離感を与える。ヘラ体(해라체) - 聞き手を目下として低く扱ったり、同等として高めない表現。下称。 ハゲ体(하게체) - ある程度年齢や社会的地位のある聞き手を目下として少し低く扱ったり、同等として高めない表現。等称。逆に言えば、聞き手の社会的な立場を認め、子供扱いしない表現である。壮年層で使われる。 ハオ体(하오체) - 目下や同等として低めて扱うことのできる聞き手を格式を改めて自分と同格まで高める表現。中称。文語的であり、日常会話ではあまり使われない。 ハシプシオ体(하십시오체) - 聞き手を目上として高める表現。命令形では動作の主体が聞き手であるので、主体敬語の-(으)시-{-si-}と一緒に使われ、(으)십시오となる。このため、かつてはハプショ体(합쇼체、합시오の略)と呼ばれていたが、7次学校文法からハシプシオ体に改められた。また勧誘形の-(으)ㅂ시다は語形態上では、ここに分類されるが、その使用状況からハオ体に分類され、-(으)시지요をハシプシオ体としている。 非格式体 - 柔らかく感情的な表現。くだけた場面で使われ、聞き手への心理的な距離感を解消する機能をもっている。反面、格式を改めなければならない場面で使うと、礼儀知らずといった印象を与えることになる。聞き手との関係ではレベルを広く包括しており、年齢や地位が下であったとしても目上として丁重に扱うこともできる。ヘ体(해체) - 広く聞き手を目下・同等として扱う表現。略待。 ヘヨ体(해요체) - 広く聞き手を目上として扱う表現。略待上称。なお学校文法では요(ヨ)を語尾とせず、用言の活用形に付くことのできる特別な助詞として分類している。なお主体敬語の-(으)시-{-si-}や語幹が시で終わる用言に-어/아で始まる語尾と結合すると셔となるが、これらの語尾では세요となるのが普通である。 中和体 - 聞き手を特定しない一般的発話状況における文体。相手を高めているわけでも低めているわけでもなく、中和している。本や雑誌、新聞といった印刷媒体で主に使われる。印刷媒体に特有なのは情報発信時と情報受信時に時間的な差があり、発話者と直接対面して得られない間接的な情報であるためである。同様の理屈でこの文体の語尾は間接引用節を導く助詞にも用いられる。ハラ体(하라체) - ヘラ体語尾が多く使われているが、命令形語尾は-(으)라{-ra}という独自の語尾である。
※この「対者敬語」の解説は、「朝鮮語の文法」の解説の一部です。
「対者敬語」を含む「朝鮮語の文法」の記事については、「朝鮮語の文法」の概要を参照ください。
- 対者敬語のページへのリンク