実験の準備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 07:00 UTC 版)
計測機器の較正を行なうため、5月7日に108 tのTNTを使って予備の爆発実験が行なわれた(この時以来、核爆発の出力はTNT換算のトン数を単位として表されるようになった)。 本番の実験で高い位置に原子爆弾を配置するために、高さ20 m[100 feet = 30 mが正確]の鋼鉄製の爆発実験塔が建設された。これは、空中で爆発させれば(爆発の衝撃波が球面状に膨張するために)目標に直接与えるエネルギー量を最大化でき、爆発後に放射性降下物に変わる粉塵の巻き上げが地表で爆発させるよりも少なく抑えられるためで、これらに加えて航空機から爆弾を投下した際にどのようになるかをより良く示すだろうと考えられたためである。 7月12日に実験場近くのマクドナルド牧場に資材が到着し、ここでプルトニウムのコアを内蔵した核爆弾(ガジェットというニックネームが付けられていた)の組立が行なわれることとなった。組立は7月13日に完了し、翌日に実験塔の上部へ引き揚げられた。 万一実験が失敗した際に貴重なプルトニウムを回収するため、グローヴズ将軍の命令でジャンボというコードネームで呼ばれる巨大な鋼鉄製の容器が用意されていた。ジャンボは240 tの重量を持ち、当初の計画ではこの中にプルトニウムと通常爆薬5 tからなる起爆装置を置いて爆発させることになっていた。爆縮が成功してプルトニウムの連鎖反応が起これば、ジャンボは蒸発して消滅する。連鎖反応が失敗に終わった場合には、ジャンボの内部で爆発が留まるため、貴重なプルトニウムが飛散するのを防ぐことができる。ジャンボは多額の費用をかけてペンシルベニア州ピッツバーグで製造され、鉄道で実験場まで運ばれた。しかしジャンボが実験場に到着する頃には、爆縮機構について研究者たちは強い信頼を持てるようになっていたため、本番の実験にジャンボを使わないことになった。その代わりにジャンボは、ガジェットから730 m離れた位置にある別の鉄塔に引き揚げられ破壊力を観察する試料とされた。この距離は爆弾の威力を概算した結果決められた。最終的にガジェットの爆発によってジャンボは破壊されずに残ったが、ジャンボを支える鉄塔は倒壊した。 爆発は、当初7月16日午前4時(現地時間)に予定されていたが、当日の早朝から雷雨が続いたために延期された。雨天の下では放射線や放射性降下物の危険が非常に大きくなることが予想され、また雷によって予期しない爆発が起きてしまう可能性を研究者たちが心配したためであった。
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