失業と賃金について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 00:06 UTC 版)
「リフレーション」の記事における「失業と賃金について」の解説
岩田規久男によれば、リフレ政策は需要不足から生ずるデフレを克服し、完全雇用(インフレを加速させない失業率)を達成するための政策であるとされる。 また、岩田はリフレ政策は「物価水準を貸し手と借り手にとっての不公正を修復する水準まで戻す政策」と定義されるが、政策の目的は景気を回復させる点であるため、物価を「企業が失業者を吸収できる水準まで戻し安定させる」であると指摘し、雇用回復と賃金上昇を伴う景気回復を目指す労働者全般に恩恵をもたらす政策であると指摘する。 経済学者の高橋洋一は「リフレ論者は、デフレの弊害について名目賃金の下方硬直性を問題視する。名目賃金が下方硬直的なので、デフレになると実質賃金が上がり、正規社員などの正規雇用者は得をするが、新規雇用者は不利となり、結果として失業率が高まることを懸念する」と指摘している。 石橋湛山は「失業は総需要のコントロールで解消できるものである」と指摘している。また石橋は「物価が上昇しリフレが実現するということは、労働者に購買力が創出されるということである。仮に、物価が上昇して、労貨が物価上昇分しか上がらなければ、労働者の状態は一人当たりで見て変わらない。しかしそういった場合、その分雇用が増えて失業が減っているから労働者総体としては購買力は上昇する」と指摘している。 経済学者の浜田宏一は「物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がらない。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増える。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていく。その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策である」「リフレ政策を通じて、物価上昇で実質賃金が低下し、企業収益が増えることで雇用拡大の余地が生まれる。ワークシェアのアイデアと同じである」と指摘している。 浜田は「リフレ政策で賃金を増やせという議論は間違いである」と指摘している。浜田は「よく『名目賃金が上がらないとダメ』と言われるが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなる。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る」と指摘している。また浜田は「収益が上がっている企業が、余力で賃上げすることは問題ではない。利益が上がっている企業は失業を増やさないし、賃上げは総需要に対しプラスの効果を生む」と指摘している。 「フィリップス曲線」、「自然失業率」、「完全雇用#インフレーションからのアプローチ」、および「デフレーション#賃金の引き上げ」も参照
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