多分割測光
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 13:45 UTC 版)
撮影エリアの中をいくつかの部分に分けて独立に明るさを測定し、コンピュータ処理により最適な露出値を求めるもの。逆光で主要被写体と周りとの輝度差が大きい場合など、平均測光や中央重点測光では適正な露出値が得られず、露出補正を必要としていたような場面でも、自動的に適正な露出値を得ることを目的としている。写真撮影に熟達していない初心者でも露出の失敗を減らせるほか、即写性が求められる用途などでも有効である。 コンピュータなどなかった時代のアナログ算出方式ながら分割測光というコンセプトが初めて用いられたのはミノルタのSR-T101、コンピュータ計算による多分割測光が実用化された初めてのカメラはニコンFAであった。 多分割測光がほかの測光方式と決定的に異なるのは、測光パターンや測光エリアの形状などだけで露出を算出しているわけではなく、測光結果をコンピュータ処理で加工して最終的な露出を求めている点である。ほかの測光方式では、測光範囲内のあるひとつの部分の測光感度は常に一定だが、多分割測光では同じ部分で測光しても感度が状況によって変化することがある。たとえば、逆光によって輝度が高くなっていると判断された箇所は一時的に感度を下げるという処理をする場合などである。このような露出値算出アルゴリズムは、カメラメーカーやカメラの機種によって異なっている。このため、同じシーンでもカメラが異なると算出される露出値に違いを生ずることがある。また、露出補正などの適正値を判断することがやや難しい。 現在では初期のものに比べ精度が向上し、デジタル一眼レフカメラのCCDようなラチチュードの狭い撮像素子でもほぼ即座に適正露出を算出できるほどに成熟された技術であるが、それでも極端な条件では露出ミスを起こすことがある。このような場合、多分割測光とオートブラケット機構やAEロック機構と組み合わせて使用することによって、作画意図どおりの写真を撮影することが可能である。またほとんどの多分割測光搭載カメラは中央重点測光やスポット測光に切り替えられる。 よく知られる各社の多分割測光方式として以下の方式がある。 オリンパス - ESP(Electro Selective Pattern)測光。OM40に搭載、その後のデジタルカメラやデジタル一眼レフカメラでも「デジタルESP測光」として搭載。 キヤノン - 評価測光。画面内のコントラストに反応して、そのコントラストの高い部分が露出の決定にどれくらい重要かを評価し、それに基づいて適正露出を算出する。順光の風景など画面内のどの部分もコントラストがあまり大きくない時は中央部重点測光のような動作になる。EOS650から搭載され、EOS10QD以降はオートフォーカスエリアも参考にした動作になった。 京セラ/コンタックス - 評価測光。 ニコン - マルチパターン測光。多点スポット測光に近い結果を算出するように設計されている。ニコンFAで初搭載、その後ニコンF5でレンズからの距離情報や被写体の色調を加味する「3D-RGBマルチパターン測光」となる。 ペンタックス - 分割測光。キヤノンの評価測光と似た算出方式。機種によってはフィルムのDXコードからラティチュード情報を読み取り、露出決定の要素に加えている。 ミノルタ/コニカミノルタ - ハニカムパターン測光。画面の広範囲にわたる測光エリアのうち、コンピュータによって算出された重点エリアをさらに細かく分割測光する。
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