基準範囲とは? わかりやすく解説

基準値

(基準範囲 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/20 20:45 UTC 版)

基準値(きじゅんち、英語: reference values)は、臨床検査の結果を解釈するための指標であり、結果値が健常人でよくみられる範囲(基準範囲)にあるか、結果値が特定の病態や治療の必要性を示唆するか(臨床判断値)、等の判断基準となるものである。


  1. ^ 本項では、上記のごとく、基準値とは「臨床検査の結果を解釈するための指標として供給されている値」を意味するという立場で記載しているが、この意味の基準値には同義語が複数あり、また、「基準値」という語自体にも別の意味(基準個体の検査値)があるので注意を要する。
  2. ^ ISO15189は臨床検査室の品質と能力に関する要求事項として国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)が作成した国際規格であり、「検査室は基準範囲または臨床判断値を定め、その根拠を文書化し、この情報をユーザに伝えなければならない。」としている。「JAB RM300:2021」5.5.2.(日本適合性認定協会) を参照。
  3. ^ 血糖コントロールマーカーであるヘモグロビンA1cの共用基準範囲は4.9 ー 6.0 %であるが、日本糖尿病学会は糖尿病の診断基準(臨床判断値)は 6.5%以上としている。
  4. ^ 検査項目の結果値分布や特性によっては、中央ではなく片側の95%であったり、95%以外の範囲が採用されることもある。
  5. ^ 関連の医療機関職員、健診の受診者、地域の住民の中の志願者、等。
  6. ^ 基準個体から得られた検査値も「基準値」と呼ばれるが、本記事が対象とする、検査結果の臨床的判断にもちいる基準値と混同しないこと。
  7. ^ 検査項目によっては、病態変動が低値または高値の片側に偏ることがあり、その場合は、中央ではなく、分布の下側または上側5%の片側限界値を持って基準範囲とする。
  8. ^ a b c 日本ではALPとLDはJSCC法で測定されていたが、2020年4月より海外で一般的なIFCC法に切り替えが進んでいる。ALPは従来のJSCC法の約1/3の測定値になるので共用基準範囲も変更となっている。LDの場合は測定値はほとんど変わらず、共用基準範囲も変更されていない。詳細は「ALP・LD 測定法変更について」(日本臨床化学会 酵素・試薬専門委員会)を参照されたい。
  9. ^ ROC曲線とは、カットオフ値(()cutoff value)、すなわち、陰性と陽性の基準となる閾値を変更することにより検査の感度、特異度がどのように変化するかをプロットしたもの。
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  17. ^ 「臨床検査のガイドラインJSLM2018」の「検体検査のサンプリング」. 日本臨床検査医学会


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基準範囲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 02:17 UTC 版)

基準値」の記事における「基準範囲」解説

基準範囲(きじゅんはんい、(英)reference interval)とは、通常健常人集団検査値の中央の95%が含まれる数値範囲意味する。なお、医療における基準範囲を、産業における計測用語の「基準範囲」区別するために、生物学的基準範囲((英)biological reference interval)と呼ぶ場合もある。 基準範囲は、概ね、以下の手順で求める。 対象とする健常者集団決定する健常者の中から、当該検査値に影響を及ぼす生理的変動等の要因(たとえば、著し肥満大量飲酒大量喫煙薬物治療中、直近の入院1年以内妊娠、など)を持たない個体基準個体)を選択する基準個体から得られ検査値 を統計処理し分布中央95%の区間求める。 基準範囲と基準値同義語のごとく扱われることがよくあるが、実際に異な概念であり、基準値は基準範囲に加えて臨床判断値含んでいる。また、基準範囲は基準個体測定値から統計的に算出されたものであるので、病態識別値、治療目標値予防医学的な判断値、などの臨床判断値とは必ずしも一致せず、基準範囲内であることのみをもってして、「問題ない」、「正常」、ということはできない。 なお、全ての検査項目について基準範囲を求めることはできない(基準範囲を設定できない検査項目参照)。

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