潜在性甲状腺機能異常症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 06:47 UTC 版)
「甲状腺疾患」の記事における「潜在性甲状腺機能異常症」の解説
血中の甲状腺ホルモン濃度は正常であるにもかかわらずTSHの濃度異常がある場合潜在性甲状腺機能異常という。 潜在性甲状腺機能亢進症 FT4が基準範囲内でTSH基準範囲下限以下は潜在性甲状腺機能亢進症である。これは甲状腺中毒症の軽症と考えられている。米国NHANESのデータでは潜在性甲状腺機能亢進症の評価をTSH<0.1μU/ml以下とするならば0.7%、TSH<0.4μU/ml以下とするならば3.2%となった。日本では約2%とされる。高齢者に多く、女性に多い。甲状腺ホルモンの投与をうけている人では頻度が多く、14 - 21%で潜在性甲状腺機能亢進症となっている。グルココルチコイド投与でもTSHは低値になる。 潜在性甲状腺機能低下症 FT4が基準範囲内でTSHが高値である場合は潜在性甲状腺機能低下症と診断される。高TSH血症も潜在性甲状腺機能低下症と同義語である。非甲状腺疾患(NTI)、夜間TSH分泌、異好抗体の存在を否定できるか検討が必要となる。潜在性甲状腺機能低下症の頻度は4 - 10%であり女性に多い。高齢者では20%以上にも達する。米国の健康栄養調査NHANESⅢでは血清TSHは性別、人種、年齢で異なることが明らかにされた。NHANESⅢではTSH値4.5mU/lが基準値上限として使用したが、TSH値は年齢とともに上昇する。年齢別のTSH値を用いなければ潜在性甲状腺機能低下症を過大評価する可能性がある。日本甲状腺学会では「潜在性甲状腺機能低下症:診断と治療の手引き」が作成されている。成人でみられる潜在性甲状腺機能低下症の原因はそのほとんどが橋本病と考えられるが、高齢者ではそれに加え加齢による変化など原因不明のものも多い。米国内分泌学会の報告ではTSHが10μU/ml以上の場合は脂質代謝への影響と妊娠時の胎児への影響が明らかになっている。抗甲状腺抗体陽性の場合は顕性甲状腺機能低下症に年間4.3%へ進展する。
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