基本的な要請
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 09:27 UTC 版)
詳細は「量子力学の数学的定式化」を参照 量子力学における基本的な要請とその数理的な表現について以下に述べる(これについては、フォンノイマンの「量子力学の数学的基礎」以外にも、伏見康治が電子ファイル公開の「確率論及統計論」で整理している)。 シュレーディンガー方程式やハイゼンベルクの運動方程式によって量子力学的な問題を取り扱う場合、物理量は作用素(さようそ、英: operator)として扱われる。量子力学の個々の問題はその基本方程式の解として得られる状態によって特徴付けられ、測定され得る物理量の具体的な振る舞いは、対応する物理量の作用素をある状態に作用させることによって知ることができる。作用素は演算子とも呼ばれ、演算子によって記述される量子力学の様式は演算子形式と呼ばれる。作用素および状態が持つ一般的な性質は、それらが満たすべき物理的な要請によって与えられる。 量子力学では、ある物理量の値が確定した状態をその物理量に対する固有状態(こゆうじょうたい、英: eigenstate)と呼ぶ。固有状態は物理量を表す作用素の固有関数(こゆうかんすう、英: eigenfunction)として表され、物理量の値は固有関数の対応する固有値(こゆうち、英: eigenvalue)に結び付けられる。 ある系が取り得る物理量の値の確率分布は具体的な系の状態によって決定される。この確率分布に関する規則はボルンの規則と呼ばれる。この系の状態はある物理量の固有状態の重ね合わせによって表すことができ、系に対して複数の物理量が与えられている場合は、それぞれの物理量に対して、その固有状態の線型結合によって系の状態の表すこともできる。 物理量作用素の固有値が実数であることや、状態の固有状態による展開が常に可能なことは、物理量に対応する作用素が自己共役作用素(じこきょうやくさようそ、英: self-adjoint operator)であることに集約される。量子力学では観測や測定が古典論にもまして重要な意味を持っているため、「物理量」というような抽象的な呼称の代わりにオブザーバブル(英: observable)、「観測可能なもの」と呼ぶことがある。量子力学において自己共役作用素となるべきものは、このオブザーバブルとされている。 ある物理量を測定し、その測定値を得た場合に、すぐさま同じ測定を続けて行うことを考えると、2回目の測定についてはその直前の測定によって、測定したい物理量に関するほとんど同時刻における完全な知識が得られている。そのため、2回目の測定値は1回目の測定値と必ず一致することが期待される。測定に関する状態の役割はボルンの規則によって規定されるべきであることから、この1回目の測定後の系の量子状態は、測定値に対応する固有状態になっていることが要求される。このことは、系の状態を波動関数によって表せば、空間に広がっていた波動関数が測定によって、ディラックのデルタ関数のようなある一点に局在した形へと瞬間的に収縮することを示している。この現象は波束の収縮と呼ばれ、波束の収縮を起こすような測定は射影測定と呼ばれる。また上述の測定に関する仮定を射影仮説(しゃえいかせつ、英: projection postulate)と呼ぶ。 演算子形式の量子力学は、以下の5つが閉じた有限自由度系の純粋状態の量子論の基本原理となっている。 状態は、ある複素ヒルベルト空間の規格化されたベクトルで表される。 オブザーバブルは、複素ヒルベルト空間上の自己共役作用素で表される。 ボルンの規則 時間発展はシュレーディンガー方程式で表される。 射影仮説(波束の収縮) ただし、量子力学の基本原理の表し方には、他に経路積分形式などもある。
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