周囲の役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:07 UTC 版)
治療は精神科医や臨床心理士などの助けを借りる必要がある。それなしでは治癒はおぼつかないが、しかし治療は精神科医や臨床心理士だけでできるものではなく、周囲の協力が大きな力になるとされる。本人にとってストレスの元になっている人を除いてだが、親や兄弟、そしてパートナーの支え、身近なものとの安心できるつながりや、その中で感情表現の機会を作ってあげることはとても大切であるという。DIDのすべてが重篤な病態というわけではなく、見守っていたり、家族や環境のちょっとした調整で改善する例も少なくない。患者という船を安心できる港に着岸させることを治療の目的と考えれば、精神科医やセラピストはDIDの治療の水路を熟知している水先案内人であり、実際に牽引して着岸させるタグボートが周囲の者と考えれば解りやすい。そのためにもパートナーや家族は必要に応じて治療者との面談を行いアドバイスを受けることが推奨される。特にパートナーや配偶者は非常に大きな力になるといわれる。周囲の接し方としては以下の3点が基本である。 「異常」あつかいをしない。 どの人格にも愛情をもって接する。依怙贔屓(えこひいき)しない 話をちゃんと聴く。気持ちを受け止める。 ただし、友達などが、打ち明けられた直後に「いいお医者さんがいるよ」などというのは異常あつかいをされたと受け取られ、その人に絶望感を与えることになりかねない。話をちゃんと聴いてあげる、気持ちを受け止める、愛情・友情をもって接することが先であり、そのこと自体が治療的である。攻撃的人格の場合は憎悪をぶつけてくるので、普通の人間にはその気持ちを受け止めることは非常に難しいが、できる限りきちんと話を聞き、言っていることを理解しようとしている姿勢を見せることは重要とされる。「暴力的な人格」の「暴力」は、純粋に加害的な暴力ではなく、多分に自己防衛的な「抵抗性の暴力」であることも多い。やってはいけないこととして、岡野憲一郎は3つあげている。 症状の背景になんらかの虐待があると決めつける。 本やインターネットの中途半端な情報を信じ、見よう見まねで「治療」を試みる。 興味本位であれこれと問いかけ、別人格を呼びだそうとする。 「話をちゃんと聴く」ことと「ほじくりかえす」ことは全く別である。また、柴山雅俊は、周囲の者が陥りやすいあやまちとして、出版されている多重人格の本を沢山読み「患者とともに知らぬ間に解離の世界へと没入」してしまうことを指摘する。
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