合理的期待形成学派
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/08 07:11 UTC 版)
「シカゴ学派 (経済学)」の記事における「合理的期待形成学派」の解説
1970年代以降、ロバート・ルーカス(1995年ノーベル賞受賞)、トーマス・サージェント(2011年ノーベル賞受賞)、ロバート・バロー、ロバート・タウンゼントらを中心に、シカゴ学派は第二世代の実証主義から数学的に厳密な理論へと研究が一変した。ルーカスは1972年に発表した論文"Expectations and the Neutrality of Money"において、合理的期待の仮定の下ではケインズ的な財政・金融政策は短期的ですら効果をもたらさないことを厳密な数学的方法で証明した。バローが1974年に発表したリカード=バローの定理もこの合理的期待形成仮説を発展させたものである。さらに、「政府の政策が裁量的に変われば,経済主体の期待が変わるので,計量経済モデルの方程式のパラメーターが変化してしまう。それゆえ,クラインたちが完成させたマクロ計量経済学モデルは,予想妥当性を持たない。」と要約される「ルーカス批判」によって、ミクロ経済学的基礎付けのない当時の新古典派やケインズ派のマクロ経済研究の意義が無くなり、リアルビジネスサイクル理論を通じて新しい古典派や新ケインズ派といった今日の主流派マクロ経済学が誕生する契機となった。彼らはケインズ経済学だけでなく1960年代のシカゴ学派(の一部の経済学者)が支持したマネタリズムをも徹底的に批判したため(実物的景気循環理論)、前時代のシカゴ学派と区別するために、彼らを「ミネソタ学派」と呼ぶ場合もある。 「ルーカス批判」によって「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」というアイディアはマクロ経済学全体に普及した。これに対してルーカスは1987年の講義録で、「近年の最も興味深いマクロ経済学の進展は、インフレや景気循環のようなマクロの問題が、ミクロ経済理論の一般的なフレームワークの中で扱われるようになったことであり、この進展が進めば、マクロという言葉自体も使われなくなるだろう」と述べ、ケインズ経済学について「理論にそぐわない、理解し難い現象が現れた時に、それは何か全く別の経済理論の証左だと言いたくなる誘惑に屈服したものである」と切り捨てている。
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