合理的分配
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 19:53 UTC 版)
合理的分配とは、特にバトラが著書などで提起しているプラウト政策の観点である。 国民総所得を分割する際、誰でも自由に好きなだけ持てる者は持てるだけ持てるという貧富の差の拡大を野放しにするような不平等な分配や、それとは反対の、勤勉かどうかにかかわらずみんな均一に平等に分配するといった完全な平等(悪平等)分配とは違い、一人一人が最低限必要な衣・食・住・教育・医療を十分まかなえるだけの所得が分配されるべきである、という考え方で、政府はこのレベルの維持に必要な所得額をしっかり計算し、その根拠に基づいて法定最低賃金を設定すべきであるとしている。(必要性に基づいた分配)そして、勤労者の労働力の価値や質や努力の高低に応じた報酬額の変化という意味での賃金の差の存在はむしろ好ましいが、その根拠とは無関係な、その本質が資本家搾取的な動機に基づくものでしかないものによって作り出された極端な賃金格差(例えばアメリカでの企業に見られる、平社員と社長との間の甚だしい賃金格差のような)の存在は無くすような政策を取るべきであるとし、バトラは、その最低賃金と最高賃金の差の適正レベルは、人間の脳が通常では10%程しか使っていないということを例にとって、10倍ぐらいが好ましいのではないか?と提言している。 これは「機会均等」の観点の政策でもあり、バトラは次のように述べる。「プラウトは平等の名のもとに、怠け者を擁護する思想ではありません。働かない人間でも社会保障によって生活ができるというのは、経済的民主主義とはいえません。この点では北欧型の社会福祉国家とは違います。プラウト社会では、勤労が奨励されます。そのためには、より多く働いたものがより多くの報酬を得る経済でなければなりません。共産主義はそこを間違えました。しかしだからといって、完全な自由を認めて富裕者が好きなだけ暴利を貪ることが許される社会であってはなりません。資本主義の問題はこの点にあります」 「プラウト経済にとって何よりも必要なことは、法律がキチンと守られることです。税制が良い例でしょう。世界各国の富裕者の中で、所得税法や相続税法を完全に守っている人物はほとんどいないでしょう。法律の抜け穴を見つけ出しては、脱税や節税に励んでいるのが現状です。むしろ、税金を法の規定どおりに払わなかったからこそ、彼らの多くは富裕者になりえたのです。納税を逃れるために、一部の富裕者は政治家を利用することすらやっています。これが富裕者の支配の実態なのです」 バトラは、累進課税制度もプラウトとして引継いで行われるべき政策であるとも述べている。
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