合理的期待形成学派の対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 07:35 UTC 版)
「流動性の罠」の記事における「合理的期待形成学派の対策」の解説
インフレ目標のような期待に訴える金融政策や、為替介入による自国通貨の切り下げなど非伝統的な金融政策が手段として主張されている。 ポール・クルーグマンの「流動性の罠」モデルが登場した背景に、二つの経済状況があり、一つは1990年代半ば以降の日本経済において、名目利子率が徐々に引き下げられほぼゼロ水準に至ったこと(ゼロ金利政策)、そしてもう一つは度重なる巨額の財政政策を行ったのに、その効果が限定的であったことである。 クルーグマンは「金融緩和は、人々の期待を変えないかぎり効力を発揮しない。そして、期待を変えることは簡単ではない」「短期的な金融緩和は、どんなに大規模なものであっても効果は無い」「しかし、長期的なインフレ期待を高めれば、将来の実質金利が下がるのと同じ効果を持つ。だから(金融緩和は)景気刺激効果がある」と指摘している。クルーグマンは「金融拡大が恒久的だと思われたら、それは(完全雇用モデルでは)物価を上げるか、(現在の物価があらかじめ決まっているなら)算出を増やす。金融政策が機能しないのは、中央銀行が今は何をしようとも、機会さえあればすぐ戻して、物価を現状水準近くに安定させるだろうと国民が期待しているからだ。もし中央銀行が市場に対して、物価の十分な上昇を本当に許すと約束できれば、経済を流動性の罠から引き出せる」と指摘している。またクルーグマンは「流動性の罠の下での財政出動は、クラウディングアウトも後世へのツケも残さない」と指摘している。 高橋洋一は「流動性の罠に陥り、名目金利が限界まで引き下げられなくなっても、マネーの量的拡大によって『いつかはインフレになる』と民間が予想する。それを利用して需要を創出することができる」と指摘している。原田泰は「名目金利が低い場合でも、量的緩和を行えば、金融はどれだけでも緩和することができる」と指摘している。 「量的金融緩和政策#予想インフレ率と実質金利」、「デフレーション#インフレ期待」、および「デフレーション#金融政策」も参照
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