合理選択マルクス主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 01:00 UTC 版)
「分析的マルクス主義」の記事における「合理選択マルクス主義」の解説
1980年代半ばまでに「分析的マルクス主義」はひとつの「パラダイム」とみなされるようになってきた。セプテンバー・グループは、幾年にもわたって、会合を続けており、メンバーによる著作が矢継ぎ早に出版された。これら著作のいくつかは、ケンブリッジ大学出版から刊行のシリーズとして世に出た。「マルクス主義と社会理論における研究」という論文を含むヤン・エルスターの『マルクスを理解する』(1985年)やアダム・プシェヴォルスキの『資本主義と社会民主主義』(1985年)などである。 エルスターは、合理的選択理論と方法論的個人主義(エルスターはこれらを社会科学にとって適切な唯一の説明形式であると定義している)というツールを用いて、マルクス主義から救い出せるものが何かを突き止めるようと、マルクスの全著作を徹底的に検討した。エルスターは、コーエンとは反対に、生産力の発展としての歴史を説明する史的唯物論は救いようがないと結論した。ローマーと同様に、エルスターもまた労働価値説を捨て去りし、さらにはマルクス経済学全体を否定するに至った。その弁証法的方法は、ヘーゲル的曖昧主義の一形態としてされた。一方で、イデオロギーと革命に関するマルクス主義の理論は引き続き、ある程度は役に立つものとされたが、それも全体論(ホーリズム)と機能主義の傾向を取り除いた限りにおいてのみ役立つのであり、個人主義的方法論と原因・意図の説明との基礎の上に確立されるのである。 プシェヴォルスキの著作は、合理的選択理論とゲーム理論を使って、20世紀の社会主義者によって採用された革命戦略が失敗しがちだった理由を説明した。その理由は、労働者たちは自身の合理的利害に照らして、リスキーな革命戦略を採用するよりむしろ、組合の認知や賃金や生活状況の改善を通じて資本主義を改良することの方に努力するからである。プシェヴォルスキの著作は、アンソニー・ダウンズ(『民主主義の経済理論』)やマンサー・オルソン(『集合行動の論理』)らのような学者によって発展した政治行動の経済学的説明の影響を受けている。
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