効果を相殺する要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 16:44 UTC 版)
財政政策による乗数効果は、様々な要因によって相殺される。 国際的な取引を考えない閉鎖経済では需要の拡大はそのまま国内生産の増加に繋がるが、国際貿易を考慮すると国内需要の増加分の一部は輸入の増加となって海外に流出してしまう。 金融緩和を伴わない財政政策の発動により、金利の上昇をまねくことがある(クラウディングアウト)。金利上昇が設備投資の抑制要因となるほか、金利上昇は自国為替レートの上昇(日本で言えば円高)を招き、輸入の増加による国内需要の流出、輸出の減少による外国向け需要の低下から乗数効果を打ち消す働きをする。 減税や公共事業の追加のために財政赤字が拡大すると、将来の増税を予想して家計が消費を抑制する可能性がある(合理的期待形成学派)。 公共投資の財源を追加的な国債の発行や税(増税)によってまかなった場合、効果は大幅に相殺される可能性がある(クラウディングアウト)。ただし、国債の発行や増税により将来にわたる想定可処分所得の割合が低下し、可処分所得に比例する想定貯蓄額が減少し、国民所得全体の貯蓄率(限界貯蓄性向)が低下すれば、乗数効果が高まり、一方で国債の発行や増税により徴収された国庫金を所得保障や社会保障、公共投資などに支出することで、家計・政府トータルでの支出性向が高まれば経済規模は拡大する可能性がある。
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