台湾人四百年史
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上記の政治運動の他に、台湾史の資料収集と執筆に相当の精力を費やした。10年をかけて『台湾人四百年史』(音羽書房、1962年)を日本語で執筆。これは台湾人の立場に立って書かれた最初の台湾通史と言うことができる。台湾独立陣営によるこの台湾史の大著は、その後1980年にアメリカ合衆国で中国語版が出され、1986年には英語版の抜粋が出版された。史明の基本的な史観は、苦しい大衆の立場を重視し、台湾社会のそれぞれの段階の形成と発展を観察するものである。彼は中国の共産主義を排斥していたが、マルクス主義への信仰は捨てられなかったといえる。 この著作のために日本の国立国会図書館と日比谷図書文化館に通って台湾に関する資料を渉猟した。日本語版の前書きで彼は「我々台湾人は、自らが拠って生きるところの社会発展史についての認識がすこぶる疎かであり、ほとんど全く知らないと言ってよい。…台湾の歴史の発展に対する認識がこのように欠如しているために、我々台湾人の中の一部(特に知識人)の台湾人意識は、必然的に濃厚な脆弱性を帯びている」と述べている。そして、このような欠点が台湾を「四百年にわたって外来の植民統治から抜け出せなくしてきた」としている。 史明は二・二八事件を台湾人の独立意識の現れと考え、台湾史を長期の植民統治と同一であると見なしたため、この著書は台湾独立の追求と不可分の関係を持っていた。この本は、1980年代末に非合法的に台湾に持ち込まれて以降、二・二八事件以降に生まれた若い世代の「台湾人意識」の覚醒にかなりの貢献をした。 史明は中華民族主義ではなく台湾民族主義の必然性を訴えた。
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