労災の隠蔽と米国労働安全衛生局OSHAへの検査妨害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:37 UTC 版)
「テスラ (会社)」の記事における「労災の隠蔽と米国労働安全衛生局OSHAへの検査妨害」の解説
2018年、テスラがカリフォルニア当局に送付した労災記録を労働者支援団体Worksafeが分析したところ、テスラにおける2015年の負傷件数は労働者100人当たり8.8件で、米自動車業界の平均6.7件を31%上回っていたことが報道された。テスラは報告書について、2017年第一四半期の事故率は業界平均より32%良好だったと反論した。さらに、Revealの調査によって労災件数を隠蔽するために法的に義務付けられた報告書において、複数の重大な負傷事故の記載を怠っていたことも報じられた。生産管理者が生産ラインの停止を回避するために爆発事故が発生する危険性を放置したり、黄色い警告色や警告音を毛嫌いするマスクCEOの嗜好に合わせて標準的な安全標識を減らした結果、従業員がフォークリフトに粉砕され、電気爆発で火傷を負い、融けた金属を浴びせられてきたことも併せて告発された。テスラはこれらを組合支持者と直接協力する過激派組織による偽情報であると非難し、最高人材責任者のギャビー・トレダーノは、元安全衛生専任者の告発に対し「彼ら自身が仕事に失敗した」との考えを仄めかした。 2019年、ネバダ州リノ郊外のギガファクトリーでもフリーモント工場と同様に当局へ適切な報告を怠っていることが報じられた。労働安全衛生局OSHAは、過去3年間で90回以上ギガファクトリーへ検査官を派遣したが、一般的な工場がOSHAの査察を受ける頻度は3年に1回程度であった。ギガファクトリーは少なくともひと月当たり3回の切断事故を含む労働災害を起こしているが、テスラはその記録すら残しておらず、2018年には毎日1件以上の911緊急通報が工場から発信されていた。 2020年、ネバダ州OSHAがギガファクトリーへ全面的な検査をしようとするのをテスラが約3カ月にわたり妨害していたことがウォール・ストリート・ジャーナルによって報じられた。従業員の一人が指を失った同日に別の従業員も裂傷を負ったことを受けて、OSHAはテスラに自社の設備について外部の評価を受けるよう命じた。雇用主はOSHAからの検査や聞き取り調査、文書提出の求めに応じることが法的に義務付けられているが、テスラはこれを拒否し、OSHAのジェス・ランクフォード最高管理責任者は2019年3月に包括的な検査を命じた。テスラは問題を認知していたかを確認するための聞き取り調査も同様に拒否した。テスラの弁護士はOSHAの検査について、法的な正当性を欠いており、その問題が解決するまで検査を「保留」にすると表明した。テスラは同社が検査官の立ち入りを拒否していると書かれた用紙に署名するよう求められた際もこれを拒否した。OSHAは判事から包括的な検査を行うための行政令状を取得したが、テスラは再び立ち入りを拒否した。その後テスラはネバダ州の司法長官をはじめとする州政府当局者と会談し、範囲を限定した上で操作を受け入れることに同意した。検査の結果、負傷記録などの書類の提出を拒否したこと等に関する是正勧告が出されたが、聞き取り調査が行われていればまた別の勧告につながっていた可能性が指摘された。OSHAはいまだに包括的な検査を行えておらず、ほとんどの雇用主はテスラのような対応はせず、求められれば検査官の立ち入りを許可していることを公表した。ネバダ州のギガファクトリーには、州政府が13億ドルに上る米国史上最大の減税措置を適用して誘致された経緯がある。
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