初期のロマン主義的作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/02 15:22 UTC 版)
「ポール・セザンヌ」の記事における「初期のロマン主義的作品」の解説
セザンヌは、1860年代から70年代を中心に、現実のモデルに基づかず、空想で描く「構想画」を多く描いている。そのテーマは、暴力、虐殺、性的放縦、誘惑、女性の聖性、美とエロスといったものである。初期の絵画は、内面の情念を露骨に表出したものが多く、絵具を力強く盛り上げて描いている。この時期のセザンヌに最も大きな影響を与えたのは、ウジェーヌ・ドラクロワとギュスターヴ・クールベであった。また、マネの『草上の昼食』や『オランピア』に着想を得た挑発的な作品を複数制作している。 セザンヌが絶賛したヴェロネーゼの『カナの婚礼』(左) と酷評したアングルの『泉』。 印象派と出会ってからは、こうした露骨なロマン主義は影を潜めたように見えるが、ガスケは、セザンヌの生涯は震えるような感受性と理論的な理性との戦いであって、自ら忌み嫌うロマン主義が芽を出し続け、後年の水浴図などにまで表れていると指摘している。 セザンヌ自身、晩年においても、フランス古典主義の巨匠ニコラ・プッサンを尊ぶと同時に、ドラクロワへの敬意を失わず、『ドラクロワ礼賛図』を描いている。そのほか、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼといったヴェネツィア派の画家や、ルーベンス、ベラスケスの生命感あふれる絵画を愛好した。他方で、新古典主義のダヴィッド、アングルや、ボローニャ派に対しては、血の通わない技法(メチエ)に陥っているとして排斥した。 セザンヌの初期構想画のオリジナリティに初めて注目したのは、メイヤー・シャピロ(英語版)であった。その後、1988年から1989年にかけてオルセー美術館などで、セザンヌの初期作品を集めた大規模な展覧会が開かれたが、初期作品をセザンヌの恥部であるとして評価しない批評家も多かった。
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