凝析・塩析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/15 12:41 UTC 版)
凝析(ぎょうせき、flocculation)は、分散質粒子同士が吸着集合して沈降する現象であり、イオン性物質(塩(えん))により引き起こされる凝析は塩析(salting out)と呼ばれる。一般に、分散質粒子は表面張力と同義の、分子間力の総和にあたる粒子間ファンデルワールス力引力を普遍的に有する。一方、分散質粒子の表面には組成と溶媒の極性の差による電位差が存在し、その表面電位と逆符号の対イオンによる拡散電気二重層が形成される。同種の粒子には同種の対イオン二重層を有するため、粒子が接近すると二重層が重なり合い、イオン拡散に由来するエントロピー効果によって浸透圧斥力が生じ、粒子の凝集が妨げられ分散系は安定化する(DLVO理論)。親水コロイドの場合、疎水コロイド同様に表面電荷を持つとともに、水和(溶媒和)により多数の水分子が配位しており、その立体斥力によってさらに強く反発し安定化する。保護コロイドは、表面にタンパク質等が吸着し、表面電位が変化し安定化している場合もある。DLVO理論によると、分散系にイオン性物質を加えた場合、バルクのイオン濃度が上昇するため相対的に電気二重層のイオン濃度が低下し(バルク溶媒と近くなり)、結果として浸透圧(斥力)が弱まり、粒子間ファンデルワールス力による凝集力が優位に発現する。親水コロイドや保護コロイドは保護層を形成している水和水やタンパク質などに塩やエタノールが吸着して分散質表面から引き剥がしてから電位差が弱化されるので、より大量の凝析・塩析物質を添加する必要がある。各種ゾルに対するイオンの凝結能力(臨界ミセル濃度の逆数)で測定すると、 陰イオン クエン酸塩 > 酒石酸塩 > 硫酸塩 > 酢酸塩 > 塩化物 (Cl-) > 硝酸塩 > 塩素酸塩 陽イオン(あまり明確ではない) Li+ > Na+ > K+ の順に凝結能力が高い。この性質は1888年に発見したフランツ・ホフマイスターにちなんで、ホフマイスター系列(英: Hofmeister's series)と呼ばれる。タンパク質は表面電荷(イオン性の側鎖)の量と分布とによって沈殿が起こるイオン濃度が異なるため、塩析はタンパク質の分離・粗精製の手段として用いられる。
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