凝固阻止物質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 09:27 UTC 版)
アンチトロンビンIII(AT3):分子量65000のタンパク質で、肝および血管内皮細胞で発現して血流中に放出される。第Xa因子やトロンビンの作用を阻害する。アロステリック部位へのヘパリンの結合により活性が1000倍にもなる。 ヘパリン:多糖類であり、アンチトロンビンIIIを活性化させる。また低分子量ヘパリンはフォン・ウィルブランド因子の活性をも低下させ、血小板との反応を抑制する。 プロテインC:トロンビンにより分解され活性化プロテインC(Activated Protein C; APC)となり、補酵素であるプロテインSと結合する。活性型第V因子や活性型第VIII因子に結合し抑制する。 プロテインS:活性型プロテインC(APC)の補酵素であり、APCと結合し抗凝固作用を示す。 エチレンジアミン四酢酸(EDTA)・クエン酸は血漿中の遊離Ca++イオンをキレート化することでトロンビンの形成を阻止する。両者とも採血した血液の凝固を阻止するために使用される。クエン酸は体内成分でもあり、体内では速やかに代謝されて凝固活性が問題にならない濃度になるため、体外循環回路内や輸血用保存血液の凝固阻止にも使用される。一方、EDTAはヒトの体の成分ではなく、体内では代謝されず二価金属イオンをキレートしたまま尿中へ排泄されるため、抗凝固作用を利用した後人体へ戻されることはない。 アスピリンはヒトの体の成分ではなく、シクロオキシゲナーゼを阻害し、血小板のアラキドン酸からプロスタグランジン、トロンボキサンA2の生合成を阻害することにより抗血小板作用を発揮する医薬品である。採血した血液に直接加えても、凝固を阻止しない。 ワルファリンはヒトの体の成分ではなく血栓形成を抑制する目的で使用される医薬品である。内服すると、肝で血液凝固因子が生合成される際にCa結合部位であるγ-カルボキシグルタミン酸の生成を阻害して血液凝固因子の機能を損なうことにより、血液凝固を阻害する。採血した血液に加えても凝固を阻止しない。
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