写真花嫁として渡米した理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 21:16 UTC 版)
「写真花嫁」の記事における「写真花嫁として渡米した理由」の解説
写真花嫁の側からすると、外国に住む一度も会ったことのない男性との結婚を決意した理由は様々である。まず、1. 当時の封建社会における家制度、倫理・道徳規範や価値基準があった。すなわち、親が決めた結婚を拒むことは考えられないことであり、親孝行や両親の希望に沿うための自己犠牲と考えたのである。また、2. 経済的な理由として、2-a. 貧しい家庭では娘を養うことができないために、できるだけ早く結婚させようとした。2-b. これは子沢山の家庭では後から生まれた子供たちの教育のためにも必要であり、特に、2-c. 米国は豊かな国だと聞かされていたので、娘からの送金を期待した。実際、2-d. 当時の女性には自活する能力がなかった。さらに、3. 日本の姑との不和、4. 婚期を過ぎた女性の不安といったネガティブな理由から、より独立心の強い女性は、5. 米国という文明国への好奇心、6. 新世界の牧歌的・浪漫的生活への憧れ、7. 日本社会における伝統的な女性の役割や結婚制度に違和感を覚え、旧弊な因習から逃れて自由を手に入れたいという思いがあったとされる。日系二世の作家ヨシコ・ウチダが1987年に発表した小説『写真花嫁』の主人公ハナはこのような女性であり、実際、労働目的で移住した男性の多くが日本であまり教育を受けていないのに対して、女性の場合は、平均以上の教育を受けた者が多かった。ヨシコ・ウチダの母イクも同志社大学を卒業し、恩師の紹介でサンフランシスコに住む日系一世と結婚した写真花嫁である。最後に、8. 悪い噂や秘密、暗い過去、偏見その他の理由で、日本で結婚できない場合もあった。写真花嫁としてハワイに渡った祖母の実話に基づくカヨ・マタノ・ハッタ監督の映画『ピクチャーブライド』の主人公カヨは、両親を結核で失い、身寄りもなく、また当時、結核が遺伝性という風説のために日本で結婚できなかったために写真花嫁の道を選んだという設定である。また、日系二世の作家ヒサエ・ヤマモトの代表作である短編小説『十七文字』のウメ・ハナゾノは、日本で結婚を考えていた男性と身分の違いのために結婚できず、死産の経験のある女性であり、同じく二世の作家ワカコ・ヤマウチの代表作である短編小説『そして心は踊る』のオカ夫人も夫に「愚かにも評判の悪い男に引っかかって、少しお古の花嫁だが、仕方なくもらってやった」と侮られる。
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