免責不許可事由と裁量免責
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 05:30 UTC 版)
免責許可の申立てが不適法で却下される場合を除き、裁判所は、破産者について、破産法252条1項各号に掲げられた事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする(同項柱書)。これらの事由を「免責不許可事由」という。 1.不当な破産財団価値減少行為(1号) 「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」をいう。 2.不当な債務負担行為(2号) 「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。」をいう。 経済的に苦しくなった債務者が、クレジットカードで買い物をし、購入した商品を換金して当面の資金を得るような行為がこれに該当する。 3.不当な偏頗行為(3号) 「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。」をいう。 4.浪費または賭博その他の射幸行為(4号) 「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」をいう。 5.詐術による信用取引(5号) 「破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。」をいう。 ここにいう信用取引による財産取得には、金銭消費貸借契約の締結(借金)も含まれる。支払不能について黙秘して借入をすることがここにいう詐術にあたるかについては、決定例が分かれている(大阪高決昭和59年9月20日判例タイムズ541号156頁は否定、仙台高決平成4年10月21日同誌806号218頁は肯定)。 6.帳簿隠匿等の行為 「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。」をいう。 無知無能による商業帳簿不備は、これに該当しないとされる(大阪高決昭和55年11月19日判時1010号119頁)。 7.虚偽の債権者名簿提出行為 8.調査協力義務違反行為 9.管財業務妨害行為 10.7年以内の免責取得など 以前に免責許可の決定が確定している場合に、その確定日から7年以内に再び免責許可の申立てがあった場合などがこれにあたる。 11.破産法上の義務違反行為 裁判所は、これらの免責不許可事由がある場合でも、「一切の事情を考慮して」免責の決定をなすことができ、これを裁量免責という。例えば、破産者に浪費(破産法252条1項4号。懈怠破産行為にあたる。)や詐術(同項5号)がある場合でも、比較的軽微なものにとどまるときは、訓戒を受けたことや反省文を提出したことなどを考慮して、免責の決定がなされることもある。
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