先鋭化する性描写
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 17:57 UTC 版)
「ドゥシャン・マカヴェイエフ」の記事における「先鋭化する性描写」の解説
コラージュ的な手法と政治批判は『WR:オルガニズムの神秘』(1971) でさらに先鋭化する。作品は、オーストリアの性科学者ウィルヘルム・ライヒ役の俳優を狂言回しとして進行する。ライヒは性の解放が社会の改革をもたらすと唱えてナチスに迫害された異端の学者だが、映画では彼の架空の講義にあわせて、オーガズムを味わう女性や性的マッサージの場面がつぎつぎに描かれ、そこにソ連のプロパガンダ映画がはさみこまれるのである。 スターリンがおごそかに行う国家式典と男女の愛撫シーンとを等価にあつかう物語は、当時欧米で大きな潮流となっていた実験映画の最先端としても注目されたが、同時にソ連に対する痛烈な政治批判になっていると受け止められ、この映画が上映されたカンヌ映画祭では観客から熱狂的な支持を集めている。 しかしこの作品は母国ユーゴスラビアで上映禁止となり、さまざまに圧力が強まるなかマカヴェイエフはまずフランス、ついでアメリカに渡り、以後は実質的な政治亡命の状態で作品を作り続ける。 次作『スウィート・ムービー』(1974)では、それまでの露骨な性的表現にグロテスクなユーモアが加味されるようになり、大量の砂糖にまみれながら交わる男女、溶けたチョコレートを満たしたバスタブで肢体をさらけだす女性といったシーンが繰り返し描かれる。そこへ廃墟となった第二次大戦時のベオグラードの町並みや、戦火に倒れた市民の遺体の映像が織り交ぜられる。この作品は食・性・死の交感関係を描いているとも評され、アメリカでカルト映画として若者から支持を集めた。 以後は寡作で、『デンマークの少女は全てを見せる』(1996)が最後の作品となった。1981年の『モンテネグロ』(スウェーデン制作)と1985年の『コカコーラ・キッド』(オーストラリア制作)でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールにノミネートされている。 2019年1月25日にベオグラードにて死去、享年86。
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