保険金殺人未遂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 11:59 UTC 版)
「富山・長野連続女性誘拐殺人事件」の記事における「保険金殺人未遂」の解説
このように北陸企画の経営が悪化しつつあつた1978年10月、Mは店の顧客だった保険外交員に懇請され、結婚相談所を介して交際していたことのある男性・甲を説得し、彼を被保険者とする生命保険(災害死亡時4,000万円)に加入させた。しかし、保険金の受取人が自身だったことから、やがて保険金欲しさの念が高じ、自ら甲を殺害して多額の保険金を得ることを考えた。当時加入していた保険は、甲が保険金を払わずに無効になっている可能性も考えたため、1979年3月には甲に懇願してさらに別の生命保険(災害死亡時5,000万円)に加入させた上で、殺害する機会を窺った。そして同年5月ごろ、2度にわたって山菜採りの名目で甲を富山県中新川郡上市町の山中へ誘い出し、崖から転落死させることを目論んだが、殺害に適当な場所を見つけられず、計画は実行できなかった。 さらに同年8月、Mは「北陸企画」の近所の薬局でクロロホルム液を購入。知人女性・乙から協力を得た上で、甲を「乱交パーティーの練習をする」との口実で富山市岩瀬浜付近の海岸に誘い出し、用意してきたクロロホルムを吸引させ、海中に引き入れて溺死させようとした。この時もクロロホルムによる麻酔効果が生じなかったため、殺害は未遂に終わったが、Mはその後も保険金への欲望から、同年10月には5,000万円の保険について、さらに半年分の掛金(128,600円)を払い込む方法を考えていた。しかし、その後は適当な機会を見出すことはできなかった。 なお、本事件で無罪が確定した北野は、長野事件での逮捕後に甲を標的とした保険金殺人の計画について、「Mと共謀の上で実行した。計画などの全貌も事前に承知していた」と自白し、後に富山事件の取り調べで同事件の嫌疑を否認した際にも同様の態度を取っていた。一方、弁護人との接見では「Mから計画を持ちかけられ、山の下見には同行したが、最終的にはMが勝手に海で実行して失敗したと聞かされたので、恐ろしくなって止めさせた」という趣旨の供述をしている。富山地裁 (1988) は、北野の供述の信用性について、「弁護人との接見時の供述内容の方が信用性が高い」と指摘した上で、「甲殺害計画に北野が一部関与していた疑いはあるが、その点をもって北野が富山事件・長野事件に関与していたことを立証することはできない。むしろ、途中で2人が仲違いし、その後はMが(甲の殺害に失敗した後も)北野の知らない間に保険金殺人などの犯罪計画を遂行する機会を窺っていたことが強く推認される」として、同計画への北野の関与状況を「北野有罪」論の根拠にしようとした検察官の主張を退けている。
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