保険金殺人の増加と悪質化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 05:33 UTC 版)
「別府3億円保険金殺人事件」の記事における「保険金殺人の増加と悪質化」の解説
この事件がテレビなどでセンセーショナルに報道されたことで、1970年代後半以降、保険金殺人が多発したとされる。保険金の受取人が真っ先に疑われ、死刑判決が漸減していた時期であっても死刑が言い渡されることが多いなど、保険金殺人は、困難で割に合わない犯罪とされているにもかかわらず、警察庁の統計によれば1969年~1973年・1974年~1978年・1979年~1983年の各5年間の保険金殺人の検挙件数は17件・26件・44件と激増し、保険金額も大型化している。 一般的に家族間の保険金殺人は、金銭欲や経済的な困窮といった動機に夫婦関係の破綻などが加わって妻や夫の殺害にいたる、あるいは、夫婦にとって邪魔になった連れ子を殺害する例が多いとされる。一方、この事件では、先に保険金殺人の計画があり、そのために結婚・養子縁組が行われたとされた点が特異であった。この点から、この事件は、のちに多発する従業員や債務者を対象とした悪質な保険金殺人の先駆けであったとする評価もある。 しかし、この事件では、荒木を疑うに足る多くの状況証拠が残されていた。評論家の高崎通浩は、著書の中で「この事件はその後の保険金殺人事件激増の契機となり、学ぶべきお手本となった。といっても、それは多分に『オレなら荒木のようなドジを踏まない……』という、いわば『反面教師』としてであっただろう。」と評している。この事件に学んだとされる事件では、犯人は自分に嫌疑がかかることを想定したうえで、犯行現場の国際化、替玉殺人や嘱託殺人など、手口が一層巧妙化するようになっていった。 なお、荒木は控訴中の1984年(昭和59年)、同様に保険金殺人が疑われてワイドショーなどで取り上げられていたロス疑惑について『週刊ポスト』に感想を求められ、「三浦氏や亡くなった同氏の奥様の事件は、事実はどうか知りませんが、併し、此の事件は私共の事件と違って、もし三浦氏が前以って殺し屋に依頼して『自分には軽傷で、妻には致命傷を与えてくれる様に』と工作しようと思えば、其の様な計画や工作の可能な事件であると思います」などとするコメントを寄せている。ロス疑惑の三浦和義と荒木は、夫が妻を殺害するという肉親間の保険金殺人としては非常に珍しいケースであること、ワイドショーに出演して被害者であると強調していること、ともに前科があり刑務所暮らしを経験していることなど、経歴や言動が似ているという指摘がある。
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