使用される書体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 09:15 UTC 版)
商業ベースの漫画においては、ふきだし内のセリフは二種類の書体が混植(混ぜて使用)されている。漢字はゴシック体、かなはアンチック体(antique=アンティークの意)となっているのである(これをアンチゴチという)。日本の漫画発展史の中で、可読性の追求により開発されてきた方法と言える。たいていの商業誌に使用されているゴシック体は、主流の新ゴなどのモダンサンセリフではなく、筆の動きを感じさせる古風な、しかし落ち着いた意匠の書体である。これは石井ゴシック体と呼ばれる書体で、写植メーカー大手・写研の創業者石井茂吉が書き起こしたもので、常にスタンダードとして使われており、写研以外のシステムを使う場合にも雰囲気の似た書体が選ばれることが多い。出版社によっては同じ写植メーカーのモリサワの書体を使用している場合もある(講談社など)。 ネームを自力で作って貼っているような同人誌などで、ワープロ専用機・ワープロソフトなどで混植が技術的に困難な場合は総てが明朝体になっていたりもしたため、混植について知らない人間でもここから「同人誌っぽい」という印象を受けることがある。最近ではパソコンの普及により、ワープロソフトで、あるいは漫画制作ソフトを用いることで、商業誌に近い組み方が容易になってきている。そういった需要も踏まえて一般向けにアンチック体の販売も増えてきているが、混植を敢えて行わずともゴシックとアンチックを組み合わせた「コミックフォント」という形でのフォント製品も販売されている。 また、ふきだしの中の文字を不気味な書体(古印体など)にしたら、恐いことを喋っているという表現になったり、かすれた文字にすると喉がしわがれた状態だという表現になったりと表現の形は様々である。商業誌でこういった特殊な表現に好んで用いられる「ボカッシィ」や「イナクズレ」といった独創的な書体の多くは写研システム専用で、ほとんどはMacintoshベースのDTPでは現在のところ使用できない。写研機は通常500万円以上するため、パソコンとフォントの組み合わせなどと違い「漫画のために個人で導入する」ことは考えづらい(写植会社に発注する方法もある)。 漫画家によっては書体と手書きを使い分けたり、場合によっては全部セリフが手書きというケースもある。
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