作風・政治への関与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 02:18 UTC 版)
「ハロルド・ピンター」の記事における「作風・政治への関与」の解説
20世紀後半を代表する不条理演劇の大家と評され、説明的な台詞や行動の動機、さらには明快でリアリズム的な舞台設定を嫌い、観客はもちろん作中の登場人物に対しても状況が明示されぬまま物語が進行してゆく反=リアリズム的な戯曲を書いた。それらの作品群にあっては、現実と非現実、現在と過去、理性と狂気、論理と非論理、明晰と曖昧が縦横無尽に交錯してゆくなかで、個々の「キャラクターが一人歩き」をはじめ、物語は多様な解釈を受け容れることのできる長大な奥行きを獲得する。また、反=リアリズム的な傾向とともに、全体主義批判を中心とする政治的な題材の作品も数多く、後期の作品ではとくに顕著である。 アラン・エイクボーンがピンターの『バースデイ・パーティ』に俳優として出演した時の話によると、エイクボーンは配役について、「この人物はどこの出身で、どこに住んでいて、両親は誰なのかを、教えてくれませんか」とピンターに質問した。ピンターは「余計なことだ。とにかくやるんだ」とだけ言ったのだという。ピンターはこの発言を否定しているが、登場人物の設定を細かく決めることはしなかったことは認めている。作者自身にとっても、何者かわからない人物を「発見」して行くとピンターは表現している。 映画の脚本家としては、ハリウッドの赤狩りを逃れてイギリスにやってきた映画監督ジョゼフ・ロージーとの仕事が名高い。 徹底した反戦思想の持ち主であり、また、全体主義的な政治や社会のあり方を批判し続けた。公の立場からNATOによるユーゴスラビア空爆やアメリカ合衆国によるアフガニスタン空爆に抗議したり、ブッシュ政権のイラク侵攻をナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーに準えたこともあった。 米国については、特にニカラグア(イラン・コントラ事件)、チリ(チリ・クーデター)、キューバなど、中南米諸国への侵略を繰り返して来たことを強調している。ニカラグアについては、米国に打倒の対象とされたサンディニスタ政権に味方する立場から、米国と交渉したこともある。
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