余震と誘発地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:07 UTC 版)
「東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム」の記事における「余震と誘発地震」の解説
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生直後から、震源域やその周辺ばかりではなく、東日本一帯を中心とした広い範囲で地震活動の活発化が見られた。例えば3月12日に発生したM6.7の長野県北部地震を始めとする新潟県や長野県の県境付近や、秋田県の内陸部及び日本海沖、福島県と茨城県の県境付近、そして静岡県東部などである。これら広範囲で見られる東北地方太平洋沖地震の影響で発生したと考えられる地震のことを誘発地震と呼ぶ。一方、岩手・宮城内陸地震と新潟県中越沖地震の余震域や猪苗代湖の南側など、東北地方太平洋沖地震前よりも地震活動が静穏化したと考えられる地域もある。 誘発地震はこれまで東西から圧縮する力がかかっていた東日本が、一転して引っ張られる力がかかるようになるなど、超巨大地震の発生によって日本列島、特に東日本ではこれまでと地殻にかかる力が変化したため発生するようになったと考えられている。東北地方の場合、本震によって太平洋プレートの沈み込みによるひずみが解消されたため、残存している北米プレート系の千島弧による北東方面からの力と本震による応力変化とが重複して、これまでとは異なる地震活動が活発化した。東北地方太平洋沖地震後に地震活動が活発化した地域では正断層や横ずれ断層型の地震発生が目立っており、例えば福島県浜通りに4月11日に発生したM7.0の地震は、東西に引っ張られる力が働くことによって発生した正断層の地震である。またこの地震は福島県と茨城県の県境付近で活発化した誘発地震の一環とも、東北地方太平洋沖地震震源域付近で発生した余震であるとも言える。誘発地震と余震との区別ははっきりしない面があり、東北地方太平洋沖地震によって日本列島にかかる力が変化することによって発生する誘発地震も「広義の余震」と言うことができる。 なお、東北地方太平洋沖地震後に地震活動が活発化した地域は、東北日本弧の中でも日高沖構造線から柏崎-銚子沖構造線の間に集中している。この地域は約2000万年前からの日本海の拡大によって大陸から分離されたブロック地塊であり、この大きな地塊が東北地方太平洋地震によって全体的に日本海溝側に引っ張られたことを示唆している。 また誘発地震の一種として、日本海溝に沈みこむ太平洋プレート上で発生するアウターライズ地震の発生も警戒される。これは東北地方太平洋地震の発生によって、太平洋プレートには引っ張られる力がかかるようになったため、プレート内で発生する正断層型の地震のことである。実際、本震発生後約40分後に太平洋プレート内でM7.5の正断層型の地震が発生したが、東北地方の太平洋沖では1933年に発生した昭和三陸地震がアウターライズ地震であると考えられ、また2006年11月15日に発生したMw8.3の千島列島沖地震の約2ヵ月半後に、Mw8.1のアウターライズ地震が発生している。
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