仲裁コスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/20 10:23 UTC 版)
「投資家対国家の紛争解決」の記事における「仲裁コスト」の解説
2009年の調査によると、ISDS関連の事件のうち、訴額が10億ドルを超える請求は33件、最も高いものでは500億ドルに上り、そのほかの100件については100ドルから9億ドルが請求されているという。経済産業省は、相当のコストや期間や現地政府との関係悪化や報道による悪影響を考慮して付託に二の足を踏む企業が多く、結果的に付託事例はインフラ・資源開発など巨額投資が絡むケースが多いとしている。そのため、投資協定違反に対する問題解決手段は、必ずしも投資仲裁に限定されるわけではなく、弁護士を通じた事前交渉等を行なう場合が多い。また、投資協定に「ビジネス環境整備小委員会」を設置する例が増えており、これは紛争になる前にビジネス環境を改善する枠組みで、1社だけではない業界全体の問題をまとめて提起できるなどのメリットがある。 仲裁のコストは、金銭的コストとして、まず仲裁機関に支払うべき費用がある。具体的には、仲裁の申立てに2万5000ドル、仲裁判断の解釈、修正、取消しに1万ドル、管理費用として年2万ドル、仲裁人のための日当(1日あたり3000ドル)や事案の複雑性等を考慮して適切と考えられる費用、その他諸々の支払いが必要となる。加えて、多額の弁護士費用の問題もある。ICSID仲裁に比べ、UNCITRAL仲裁ルール等に基づくアドホック仲裁は時間や費用がかさむ傾向があると言われる。仲裁に要した費用は、当事者が特別の合意をしなければ仲裁廷が決定することになっており、敗訴者に全額負担させた例もある。オーストラリア国立大学のキーラ・ティンヘル研究員は、原則として負けた当事者が負担することとされているが、事案の性質等を考慮した上で、ICSCDは、弁護士費用も含めて、これらの費用を当事者双方に分担して支払わせることも可能としている。2005年のUNCTAD発表によると、投資家・国家間紛争において、投資家にあたる会社が支払った仲裁費用・弁護士費用は400万ドル、政府側にかかった費用は、平均して仲裁費用に40万ドル、弁護士費用として100万~200万ドルであった。また、時間的なコストについても併せて考える必要がある。紛争解決までに要する時間は、平均3~4年、比較的単純な例でも2~3年はかかり、最長事例になると、申立てから仲裁判断がなされ、その最終的な取消決定まで13年を要している。
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